前談
JINS MEMEを活用し、姿勢の悪化を事前に防ぐアイデア「coranu」
『異能vationグランドチャレンジ』に応募したアイデアの記録です。
今回考えたアイデアは、JINS MEMEで取得できるまばたきや体の動きのデータをもとに、オフィスワーカーや学生の悪い姿勢・長時間の同姿勢を検知し、肩こりや腰痛、集中力低下などの事前予防につなげる仕組みです。
タイトルは、オフィスワークの労働生産性は姿勢矯正や肩こりなどの事前予防から考える、という意味を込めて『coranu』としました。
当時はコンテスト応募作品として考えたアイデアでしたが、コロナ禍以降、在宅ワークやオンライン学習が広がったことで、長時間のデスクワークに伴う身体的な不調は、より身近な課題になりました。
肩こりや腰痛は、症状が出てから対処することが多いものです。しかし、本来は「悪くなってから治す」のではなく、「悪くなる前に気づく」ことが大切です。
この記事では、JINS MEMEを活用した先制医療型のアイデアとして、姿勢・集中力・労働生産性をどう結びつけて考えたのかを整理します。
この記事で整理していること
- 異能vationグランドチャレンジへの応募記録
- デスクワークや在宅ワークで増えた身体的な悩み
- 悪い姿勢と長時間の同姿勢が、健康や成果に与える影響
- JINS MEMEを使った先制医療型のソリューション案
- 目線調整や2つのデバイス連携によるユースケース
- オフィスワーカー・学生・在宅ワーカーへの展開可能性
- 応募結果と、今振り返って感じる学び
00. スライド紹介
01. 応募概要
異能vationグランドチャレンジに応募した先制医療型アイデア
『異能vationグランドチャレンジ』は、JINS MEMEで取得できるまばたきや体の動きのデータから、健康増進や先制医療につながる新しい指標を考えるアイデアコンテストでした。
JINS MEMEは、メガネ型のウェアラブルデバイスです。日常生活に近い形で装着でき、まばたき、視線、頭部の動き、姿勢の変化など、身体に関するさまざまなデータを取得できる可能性があります。
このコンテストでは、「毎日データを取得し続けることで、どのような変化を検知できるのか」「そのデータを先制医療や健康増進にどう活用できるのか」という観点が求められていました。
先制医療という考え方
先制医療とは、病気になってから治療するのではなく、病気になる前の兆候に気づき、発症を未然に防ぐ考え方です。
今回のアイデアでは、この考え方をオフィスワークや学習環境に応用しました。
たとえば、長時間の同姿勢、画面を覗き込むような姿勢、集中力の低下、眠気の兆候などを早めに検知できれば、肩こりや腰痛、作業効率の低下が深刻になる前に、休憩や姿勢改善を促すことができます。
現在、日本社会は、急速なスピードで高齢化を迎えており、膨張する医療費は私たちの生活を圧迫しつつあります。この状況を変えるためには、一人一人が自分と向き合い、病気になる前に発症を未然に防ぐ仕組み「先制医療」を中心に据えた医療システムの構築が鍵となります。
※異能vationグランドチャレンジ募集要項より引用
coranuで考えたテーマ
私が注目したのは、オフィスワークや学習中の「姿勢」です。
姿勢の悪化は、一見すると小さな問題に見えます。しかし、毎日積み重なることで、肩こり、腰痛、集中力低下、眠気、疲労感につながります。
特にデスクワークでは、自分では姿勢が悪くなっていることに気づきにくいものです。気づいたときには、すでに肩や腰に負担が溜まっていることもあります。
そこで、JINS MEMEのようなウェアラブルデバイスを活用し、本人が気づきにくい姿勢の崩れや長時間の同姿勢を検知する仕組みを考えました。
02. 問題提起:デスクワークとコロナ禍の悩み
長時間の机上作業が、健康と生産性に与える影響
IT人材、エンジニア、デザイナー、事務職など、パソコンを使う仕事では、長時間同じ姿勢で作業することが多くなります。
集中していると、画面に顔が近づいたり、背中が丸まったり、首だけが前に出たりしても、自分ではなかなか気づけません。
その状態が毎日続くと、肩こりや腰痛、目の疲れ、眠気、集中力の低下などにつながります。
健康悪化への症状
デスクワークで起きやすい身体的な不調には、肩こり、腰痛、首の痛み、目の疲れ、尻痛などがあります。
これらは、突然発生するというよりも、日々の姿勢や作業習慣の積み重ねによって少しずつ悪化していくものです。
だからこそ、症状が出てから対応するだけではなく、不調につながる前段階で気づく仕組みが必要だと考えました。
眠気・集中力低下・姿勢の悪さが成果に影響する
眠気や集中力の低下、姿勢の悪さは、本人の体調だけでなく、仕事の成果にも影響します。
たとえば、姿勢が悪くなると呼吸が浅くなり、疲れやすくなることがあります。肩や首に負担がかかると、作業に集中しづらくなります。
また、眠気や疲労が増えると、判断ミスや作業スピードの低下にもつながります。
つまり、姿勢の問題は単なる健康問題ではなく、労働生産性にも関わるテーマです。
学生の勉強でも同じ課題が起きている
机上作業の課題は、仕事だけでなく学生の勉強にも当てはまります。
長時間の勉強、オンライン授業、タブレット学習、受験勉強などでは、子どもや学生も同じように悪い姿勢になりやすくなります。
特に、集中しているときほど姿勢の崩れには気づきにくいものです。
このアイデアは、オフィスワーカーだけでなく、学習に取り組む学生や子どもにも応用できる可能性があると考えました。
注目したいのは「悪い姿勢」と「長時間の同姿勢」
今回、特に注目したのは、悪い姿勢と長時間の同姿勢の組み合わせです。
どちらか一方だけでも身体に負担がかかりますが、この2つが重なると、肩こり、腰痛、集中力低下などにつながりやすくなります。
そこで、JINS MEMEで取得できるデータを活用し、悪い姿勢や同姿勢の継続時間を検知できれば、健康悪化や生産性低下の前に手を打てると考えました。
03. Appendix:参考資料と背景整理
姿勢の悪化が起きる背景を、補足資料として整理
ここでは、問題提起を補足するための参考資料を整理しています。
今回の提案では、単に「姿勢が悪いから直しましょう」と伝えるだけではなく、なぜ姿勢が悪くなるのか、どのような環境で悪化しやすいのか、どのタイミングで気づけるとよいのかを考えました。
姿勢が崩れるタイミングを捉える
姿勢の崩れは、作業開始直後よりも、作業が長引いたタイミングで起きやすくなります。
最初は正しい姿勢を意識していても、時間が経つにつれて、背中が丸まり、顔が画面に近づき、肩や首に負担がかかっていきます。
この変化を本人の意識だけで防ぐのは難しいため、デバイス側から気づきを与える仕組みが有効だと考えました。
健康と成果を分けずに考える
姿勢の悪化は、健康面だけでなく、作業成果にも影響します。
身体が疲れると、集中力が下がり、作業効率も落ちます。作業効率が落ちると、さらに長時間作業になり、結果として身体への負担が増えるという悪循環が起きます。
この悪循環を止めるには、作業中に小さく気づき、早めに姿勢を直したり、休憩を取ったりできる仕組みが必要です。
04. ソリューション案
JINS MEMEを活用し、姿勢・集中力・休憩タイミングを支援する
今回のソリューション案では、JINS MEMEで取得できるまばたきや体の動きのデータを使い、姿勢の悪化や同姿勢の長時間化を検知することを考えました。
ポイントは、本人が不調を感じてから通知するのではなく、不調につながりそうな前段階で気づきを与えることです。
JINS MEMEを利用する
JINS MEMEは、日常的に身につけやすいメガネ型デバイスです。
姿勢の傾き、頭部の動き、まばたきの変化などを取得できれば、デスクワーク中の状態を継続的に見守ることができます。
たとえば、以下のような兆候を検知することを想定しました。
- 長時間、姿勢が変わっていない
- 顔が前に出て、画面に近づきすぎている
- 頭部の角度が下がり、猫背に近い状態になっている
- まばたきや動きの変化から、眠気や集中力低下の兆候がある
- 休憩を取らずに作業を継続している
解決策まとめ
この仕組みでは、健康悪化の前段階で気づき、姿勢を整え、休憩や軽い運動を促すことを目指しました。
通知の出し方も重要です。
単に「姿勢が悪いです」と注意するだけでは、ユーザーにとってストレスになる可能性があります。
そのため、以下のようなやさしい通知やアクション提案を想定しました。
- そろそろ目線を上げてみましょう
- 背中を伸ばして、深呼吸してみましょう
- 5分だけ立ち上がって、肩を回してみましょう
- 同じ姿勢が続いています。少し休憩しませんか
デバイスで姿勢を可視化し、ユーザーが責められるのではなく、自然に行動を変えられる支援を目指しました。
05. ソリューション詳細
目線調整から始めて、デバイス連携でユースケースを広げる
ソリューションを実現するうえで、最初から複雑な仕組みを作る必要はないと考えました。
まずは、姿勢改善の中でもわかりやすく取り組める「目線の高さ」から始めることを想定しました。
手始めに物理的な目線調整から
姿勢改善というと、背筋を伸ばすことをイメージしがちです。
しかし、実際にはモニターの高さ、机と椅子の位置、ノートPCの角度など、作業環境そのものが姿勢に大きく影響します。
たとえば、ノートPCを机にそのまま置いて作業すると、どうしても目線が下がりやすくなります。その結果、首が前に出て、肩や背中に負担がかかります。
そこで、まずは物理的な目線調整から始めることを考えました。
- モニターの高さを目線に近づける
- ノートPCスタンドを使う
- 外部キーボードやマウスを使う
- 椅子の高さや座面の位置を調整する
JINS MEMEで姿勢の変化を確認しながら、作業環境の調整効果を可視化できれば、ユーザーは自分に合った姿勢改善方法を見つけやすくなります。
2つのデバイスを利用する
次のステップとして、JINS MEMEに加えて、もう1つのデバイスを組み合わせる構成を考えました。
JINS MEMEで頭部や目線、まばたきの情報を取得し、別のデバイスで座位姿勢や身体の動き、作業時間などを補足することで、より立体的に作業状態を把握できます。
たとえば、以下のような組み合わせが考えられます。
- JINS MEME:目線、まばたき、頭部の傾き
- 椅子・座面センサー:座り方、重心、同姿勢の継続時間
- PCアプリ:作業時間、休憩間隔、集中時間
- スマートフォン:通知、記録、日次レポート
これらを組み合わせることで、単なる姿勢チェックではなく、作業習慣全体を支援する仕組みに広げられると考えました。
ユースケース
このアイデアは、オフィスのデスクワークだけでなく、学生の勉強、在宅ワーク、資格学習、リモート会議など、幅広い場面で使えると考えました。
- オフィスワーカーの肩こり・腰痛予防
- エンジニアやデザイナーの長時間作業支援
- 学生のオンライン学習や受験勉強の姿勢改善
- 在宅ワーカーの作業環境改善
- 資格学習中の集中力低下や眠気の検知
働く人にも、学ぶ人にも、長時間の机上作業は共通しています。
だからこそ、姿勢や作業時間をデータで見守り、無理なく改善できる仕組みには、広い応用可能性があると感じました。
06. その他:補足資料
提案内容を補足するスライド資料
ここでは、提案内容を補足するスライド資料を掲載しています。
本提案では、JINS MEMEの取得データをそのまま表示するだけでなく、ユーザーの行動変容につながる形に整理することを重視しました。
「悪い姿勢を検知する」だけでは、サービスとしては不十分です。
大切なのは、検知した後に、ユーザーが自然に姿勢を直したり、休憩したり、作業環境を見直したりできることです。
通知設計で意識したいこと
健康支援系のサービスでは、通知の言葉が強すぎると、ユーザーにストレスを与えてしまう可能性があります。
たとえば、「姿勢が悪いです」と指摘されるだけでは、責められているように感じる人もいるかもしれません。
そのため、通知は命令ではなく、提案に近い表現がよいと考えました。
- 少し目線を上げてみませんか
- 肩を回して、ひと息入れましょう
- 集中が続いています。短い休憩を入れてみましょう
- 同じ姿勢が続いています。立ち上がってみませんか
ユーザーが前向きに行動できる言葉にすることで、継続利用しやすい体験になると考えました。
日々の変化を記録する価値
また、姿勢や作業時間を日々記録できれば、自分の作業習慣を振り返ることもできます。
たとえば、以下のような振り返りができると、改善行動につながりやすくなります。
- 午前中は姿勢が安定しているが、午後に崩れやすい
- 会議が続く日は、同じ姿勢の時間が長くなりやすい
- 集中作業の後半で目線が下がりやすい
- 休憩を入れた日は、作業後の疲労感が少ない
自分では気づきにくい習慣をデータで見える化できれば、健康管理だけでなく、働き方や学び方の改善にもつながります。
07. 応募結果と振り返り
落選したからこそ、アイデアの余白と可能性を考える
今回の応募作品『coranu』は、結果としては落選しました。
しかし、落選したからといって、テーマ自体の価値がなかったとは考えていません。
むしろ、コロナ禍以降の在宅ワーク拡大やオンライン学習の普及を振り返ると、姿勢矯正、肩こり予防、集中力の維持、作業環境の改善は、今あらためて重要なテーマになっていると感じます。
当時よりも課題が身近になった
応募当時は、オフィスワークや学生の勉強を中心に考えていました。
しかし、その後、在宅ワークが広がったことで、家庭内の作業環境がそのまま仕事環境になる人が増えました。
自宅の椅子や机が仕事向けではないまま、長時間作業する人も多くなりました。
その結果、肩こり、腰痛、目の疲れ、集中力低下といった課題は、より身近なものになったと感じます。
今ならどう改善するか
もし今このアイデアを再検討するなら、いきなり専用デバイス前提にするのではなく、スマートフォンやPCアプリ、簡単なセルフチェックから始める形にすると思います。
たとえば、以下のような小さなMVPから始めることができます。
- 作業時間と休憩時間を記録する
- 定期的に姿勢チェックを促す
- モニター位置や椅子の高さをセルフチェックする
- 肩こりや腰痛の状態を日次で記録する
- 作業後の疲労感と集中度を振り返る
そのうえで、必要に応じてJINS MEMEや他のウェアラブルデバイスと連携する形にすると、より現実的に始められると感じます。
司会パンダ 08. まとめ:姿勢の事前予防が、働き方と学び方を変える
「悪化してから」ではなく「悪化する前」に気づく仕組み
今回の応募作品『coranu』は、オフィスワークや学習における悪い姿勢・長時間の同姿勢に注目し、JINS MEMEのデータを活用して事前予防につなげる構想でした。
姿勢の悪化は、すぐに大きな病気につながるものではないかもしれません。
しかし、毎日の積み重ねによって、肩こり、腰痛、眠気、集中力低下、作業効率の低下につながります。
だからこそ、悪化してから治すのではなく、悪化する前に気づく仕組みが大切です。
この企画で学んだこと
今回の企画から、特に以下の学びが残りました。
- 姿勢の悪化は、健康だけでなく労働生産性にも関わる
- 長時間の同姿勢は、オフィスワーカーにも学生にも共通する課題
- ウェアラブルデバイスは、本人が気づきにくい変化を見える化できる
- 通知は注意ではなく、行動しやすい提案として設計する必要がある
- 大きな仕組みの前に、目線調整や休憩促進など小さな改善から始められる
- 在宅ワーク時代には、作業環境と健康管理をセットで考えることが重要
結果としては落選しましたが、このアイデアは、今振り返っても意味のあるテーマだったと感じています。
健康と生産性は、別々のものではありません。
身体の負担を減らすことは、働き方や学び方を整えることにもつながります。
これからも、UI/UXデザインやプロダクト企画に関わる中で、使いやすさだけでなく、人の身体や生活習慣に寄り添う体験設計を考えていきたいと思います。



































