前談|3度の特許挑戦のなかの”最初の1歩”
POINT本記事は、私にとってはじめての特許挑戦となった2011年の「麻雀の自動点数計算アプリ」の全記録です。結果は取得には至らず断念。しかしこの1歩がなければ、その後の物流AR・イベント支援の特許取得には繋がらなかった――。アイデアの着眼、技術検証の壁、特許申請の現実、そして15年経ったいま改めて見えるものまでを、当時の生の感触で振り返ります。
過去、私は特許申請に3回挑戦してきました。うち2回は「取得済み」を体験しております。
過去の特許挑戦 -Tips・挑戦1度目は、2011年。画像認識を活用した麻雀の自動点数計算システム。
・→弁理士に依頼せず、自力で進めて断念しました。(当ページで解説)
・挑戦2度目は、2012年。物流ピッキングのARナビゲーションで、就業先のチームとして取得済み。
(大手物流企業向けのプランニングがきっかけで、課題解決の方法を模索して誕生。当時は広告やPVも自ら制作しました)
・挑戦3度目は、2019年。「イベント支援システム」として取得済み。
このページでは、私にとって最初の特許挑戦となった「麻雀の自動計算アプリ」について振り返ります。結果として、この挑戦は特許取得には至りませんでした。
しかし、今振り返ると、アプリ企画、技術検証、特許文献調査、申請書作成までを自分で経験したことで、その後の企画力やプロダクト発想に大きくつながった出来事でした。
この記事で整理していること
- 2011年に挑戦した「麻雀の自動計算アプリ」の企画背景
- アイデアの面白さと、当時のAndroid環境で見えた技術的な壁
- システム特許に強い弁理士と出会えなかったときの苦労
- 開発と特許申請を同時並行で進めた結果、何に行き詰まったのか
- 2026年のいま、AIが身近になった社会で見える”再挑戦の可能性”
- 取得できなかった挑戦から、その後の特許取得へ繋がった学び
01. 今回は「麻雀の自動計算アプリ」に挑戦したお話
テーマ紹介
なぜ”アプリプランナー”として特許に挑もうと思ったのか
POINT「自分で特許を取ってみたい」――その純粋な好奇心から始まった2011年の挑戦。麻雀の点数計算という日常の不便さに着目し、画像認識×スマートフォンで自動化する企画として動き出しました。

今回は、1度目の挑戦となった「麻雀の自動計算アプリ」のお話です。
なぜ特許取得に挑戦したのか、その経緯と内容についてご紹介します。
02. 2011年|アプリプランナー人生のチャレンジ
企画の発端
“世の中にないアプリ”を、自分の手で形にしたかった
POINT当時、スマートフォンアプリの市場が立ち上がり始めたタイミング。「世の中にまだない、便利なアプリを自分で形にしたい」という熱量が、特許という”権利化”の発想に直結しました。

2011年当時、私はアプリプランナーとして「世の中にまだないアプリを、自分の手で形にしたい」という想いを強く持っていました。スマートフォンというデバイスがちょうど普及期に差し掛かり、毎日のように新しいアプリが生まれていた時代です。
そのなかで、エンジニア仲間との雑談から、麻雀牌をスマートフォンのカメラで認識して自動で点数計算をするアプリというアイデアが浮かびました。初心者でも点数計算で迷わず、純粋にゲームを楽しめる――そんな未来をプロダクトとして描いたのです。


03. アイデアは光るのに、技術的な壁が想像以上に高かった
技術の壁
企画の筋は良かった。しかし、当時のスマホ環境では届かなかった
POINT麻雀牌の認識には、照明・角度・距離・影・牌の種類という多数の変数が絡みます。2011年当時のスマートフォンカメラと画像処理ライブラリでは、この壁を超えるのが本当に難しかったのです。

企画としては、とてもわかりやすいものでした。麻雀牌をスマートフォンのカメラで撮影し、牌の種類を認識し、役や点数を自動で計算する。初心者でも点数計算に迷わず、ゲームを楽しめるようにするアプリです。

しかし、実際に開発を考え始めると、すぐに壁が見えてきました。当時のAndroid端末は、今ほどカメラ性能が高くありません。照明環境によって画像が暗くなったり、牌の角度によって文字や模様が歪んだり、手ブレや影の影響も受けやすい状況でした。
さらに麻雀牌は、数字だけでなく、萬子・筒子・索子・字牌など、文字、記号、図形が混在しています。単純な文字認識だけでは判定できず、色、形状、配置、模様などを複合的に解析する必要がありました。
私「特許申請も手探りでやってみますよ!」
この頃から、私は類似文献を探し、既存の特許書類や図面、書籍を参考にしながら、自分なりに特許申請書を書き始めました。開発と特許申請を同時に考える、かなり無謀な挑戦だったと思います。
今ならば、AI、機械学習、画像認識API、スマートフォンの高性能カメラを活用することで、実現方法を検討しやすい企画です。しかし、当時はまだ環境が整っておらず、アイデアに対して技術が追いついていない感覚がありました。
また現在であれば、逆に似たような技術やサービスが多数存在するため、特許として新規性を主張するのは難しくなっているかもしれません。そう考えると、2011年時点でこのテーマに挑戦したこと自体は、かなり早い段階での着眼だったと感じています。
04. 弁理士に相談するも、システム特許の専門でないと厳しい
特許申請の現実
“システム特許”は、書き方も考え方も独特だった
POINT機械や道具の特許と、アプリやシステムの特許では、請求項の組み立て方も発明の表現方法もまったく異なります。専門外の弁理士のアドバイスでは、なかなか核心に届きませんでした。

一般的な機械や道具の特許と、アプリやシステムに関する特許では、書き方や考え方が大きく異なります。単に「便利なアプリを作りたい」という説明では不十分で、どのような処理手順で、どのような技術的課題を解決し、従来技術と何が違うのかを論理的に説明する必要があります。
私は大阪府の無料相談窓口を利用し、当時3名の弁理士に相談しました。ただし、相談した方々はいずれもシステム系の特許に強い方ではなく、いただいたアドバイスが的外れに感じる場面もありました。

もちろん、当時の私は特許の専門家ではありません。それでも、取得済みのシステム特許や関連書籍を読み込みながら申請書を作成していたため、「この方向性ではないのではないか」と違和感を持つ部分がありました。
この経験から、システム特許やソフトウェア系の発明は、専門領域に詳しい弁理士に相談することが非常に重要だと実感しました。発明の中身を理解してもらえなければ、権利化のための文章に落とし込むことも難しくなります。
05. 開発面でも申請面でも行き詰まり、最初の特許挑戦は断念へ
断念の瞬間
“ファーストペンギン”だったがゆえに、時代に早すぎた
POINTアイデアの筋は良かった。社会的なニーズもあった。けれど、当時の技術環境・開発力・特許実務の知識のすべてが追いついていなかった。結果として2011年の挑戦は断念に至りました。

一方で、開発エンジニア担当のペンギンさん側も行き詰まっていました。
当時のAndroid端末のカメラ性能は、現在と比べるとまだ発展途上でした。麻雀牌や点棒をカメラで正確に認識させるには、照明、角度、距離、影、牌の種類など、多くの条件をクリアする必要がありました。
また、特許申請書の作成も簡単ではありませんでした。発明の仕組みを言葉にするだけでなく、請求項として権利範囲を定義し、図面と説明文を整え、従来技術との差分を示す必要があります。
アイデアとしては面白い。社会的にもニーズがある。けれど、技術検証と特許申請の両方を、当時の自分たちだけで進めるにはハードルが高すぎました。
結果として、2011年の特許取得はこの時点で断念することになりました。
アプリ企画としては「ファーストペンギン」的な挑戦だったと思います。まだ市場に類似アプリが少なく、発想としては早かった一方で、当時の技術環境、自分自身の開発力、そして特許実務の知識が追いついていませんでした。


06. あれから15年、AIが身近になった社会では実現性が高まった
時代の追い風
2026年の今なら、AIの画像認識と予測で実現できる
POINT2023年以降、AIによる画像認識・生成AIは一気に身近な存在になりました。2011年に断念した企画が、いまなら一気に実装に近づく――それだけ”アイデアの着眼点は早すぎた”とも言える挑戦でした。
2023年以降、AIによる画像認識や生成AIは一気に身近な存在になりました。スマートフォンのカメラ性能も向上し、画像から物体を認識したり、複数の情報を組み合わせて判断したりすることが、誰の手元でも可能な時代になりました。
15年前に夢として描いた「麻雀牌を撮るだけで点数計算が完了する世界」は、今であればクラウドAIとモバイルカメラの組み合わせで現実に持ち込める射程に入っています。一方で、すでに市場には類似のアプリや学習サービスも数多く存在しており、特許として権利化するための”新規性のハードル”はむしろ上がっている可能性があります。
それでも、2011年の挑戦は私にとって大きな意味がありました。企画を考えるだけでなく、技術的な実現性を検討し、法律的な観点から発明を整理しようとした経験は、その後のプロダクト企画やUI/UX設計にも活きています。
07. 取得できなかった挑戦も、次の企画力につながっている
学びと振り返り
アイデアは、技術・市場・権利化の3つを同時に考える
POINTこの挑戦で得た最大の学びは、「アイデアは、技術・市場・権利化の3つを同時に考える必要がある」ということ。この視点が、2012年の物流AR・2019年のイベント支援の特許取得につながりました。
この挑戦で得た一番大きな学びは、「アイデアは、技術・市場・権利化の3つを同時に考える必要がある」ということでした。
便利そうなアイデアであっても、技術的に実現できなければプロダクトにはなりません。実現できたとしても、ユーザーに使われなければ事業にはなりません。そして特許として守ろうとするなら、従来技術との差分や独自性を明確に言語化する必要があります。

2011年の麻雀アプリは、結果だけ見ると断念→失敗した企画です。
しかし、私にとっては「プロダクトを構想する」「技術の壁を調べる」「権利化まで考える」という視点を得た、重要な原体験でした。
この経験や学びがあったからこそ、その後の2013年に物流ARナビゲーションでの特許取得!
そして2019年のイベント支援システムの特許取得!にも繋がったのだと思います。
続編「特許取得への挑戦 2019 -イベント支援アプリ編-」
続編では、個人で特許を取得できたときのお話をご紹介します。