前談|これまでの特許挑戦の歩み

POINT本記事は3度目の特許挑戦で取得に至った「イベント支援システム」の全記録です。麻雀の自動点数計算(断念)、物流ピッキングのARナビゲーション(取得済み)に続く挑戦のなかで、何を考え、何を仕込み、どう成立に持ち込んだのか。発想の起点から技術的な勘所、プレゼンの場での反応までを、当時の生々しい記憶とともに振り返ります。

麻雀の点数計算を自動化せよ!特許断念から学んだ、初めての知財挑戦リアル体験記

これまでに、特許申請には3回チャレンジしてきました。そのうち2回は「取得済み」を経験しています。

  • 【挑戦1度目】2011年 ― 画像認証を活用した麻雀の自動点数計算システム。弁理士に頼らず自力で進めましたが、惜しくも断念しました。
  • 【挑戦2度目】2012年物流ピッキングのARナビゲーションを、就業先のチームで取得済み。大手物流企業向けプランニングをきっかけに課題解決の方法を模索した結果生まれたアイデアで、当時は広告やPVも自ら制作しました。
  • 【挑戦3度目】2019年「イベント支援システム」を取得済み本ページで解説します。

この記事で整理していること

  • 3度の特許挑戦の全体像と、今回取得に至った背景
  • ITシステム分野で個人が特許を取得することの難しさ
  • 「イベント支援システム」のコンセプトと社会的な意義
  • マッチングを支える指標(相性指標・印象指標)の設計思想
  • ウェアラブル・センシング・感情分析の活用イメージ
  • “デジタル仲人”としてのプロダクト像

01. ITシステム分野で個人が特許を取得することの希少性

背景理解

ITシステムの個人特許は、なぜ稀有なのか

POINTITシステム分野の特許は大手企業や研究機関の出願が圧倒的多数を占め、個人での出願・取得は極めて少数派です。実装の進化が速く先行技術調査も難しいため、個人にとってはハードルの高い領域だと言えます。

ITシステム分野の特許は、毎年膨大な数が出願されています。しかしその大半は、大手の事業会社や研究機関、スタートアップなどの法人によるものです。個人発明家がITシステム分野で特許を取得する事例は、全体のなかでも非常に限られています。

理由はいくつかあります。第一に、IT領域は技術の進化が速く、出願時点でのアイデアが数年後にはありふれた実装になっている可能性があります。第二に、先行技術調査の範囲が広く、専門知識がなければ「新規性」「進歩性」を立証することが難しい。そして第三に、出願から登録までの費用・時間・労力を、個人で負担し続けることそのものが大きな壁になります。

それでも今回、3度目の挑戦で取得に至ったのは、課題設定・技術構成・先行技術との差別化を、自分なりに丁寧に組み立てた結果だと考えています。

02. 「イベント支援システム」というテーマを選んだ理由

テーマ選定

なぜ”出会い”の場をテクノロジーで支えようと考えたのか

POINT婚活パーティーや交流イベントの現場には、本人すら把握できていないニーズや相性の手がかりが散らばっています。これをデジタル解析で拾い上げ、一期一会の質を最大化することを狙ったのが本システムです。

なぜ「イベント支援システム」の特許取得に挑戦したのか――その経緯と内容をご紹介します。

婚活パーティーや交流イベントの現場には、参加者本人ですらまだ言語化できていない潜在的なニーズや、相性の手がかりが無数に散在しています。一度きりの出会いの場で、その情報をうまく拾い上げ、可視化し、参加者にとって最善のマッチング機会を提供できないか――これが本システムの出発点でした。

従来のお見合いや街コンは、運営側の経験と勘に依存する場面が多く、参加者の満足度にも個人差が生まれやすいものでした。そこにデジタル解析の力を組み合わせることで、より質の高い出会いの機会が再現性をもって得られるはずだと考えたのです。

03. 散在する”情報”を2つのタイプで整理する

情報設計

ペルソナ情報と、ニーズ&ウォンツの二層構造

POINTイベント参加者から得られる情報を「ペルソナ情報」「ニーズ&ウォンツ」の2層に分け、システム上で扱いやすい形に正規化することが、マッチング精度を高める鍵になります。

散在する情報は、大きく次の2タイプに分けて捉えています。

  • ① ペルソナ情報 ― 名前(ニックネーム)、年齢、住所、メールアドレス、外見、趣味、職業、収入、性格、喫煙の有無、酒量、語学、連絡頻度、婚歴、子供の有無、求める家庭像 など
  • ② ニーズ&ウォンツ ― 相手に求める条件(職業、趣味 など)

ペルソナ情報は「その人がどんな人か」を示す静的データ、ニーズ&ウォンツは「その人が何を求めているか」を示す動的データに近い性質を持ちます。両方を別の軸として扱うことで、相性判定とマッチング精度の両立が見込めるようになります。

04. ステークホルダー全員にWIN-WINを設計する

マッチング設計

参加者・仲介者・運営者の満足を同時に最大化する

POINTマッチングは「参加者同士の相性」だけではなく、仲介者・運営者などの関係者全員の満足度を同時に高めることを目指します。一方通行の最適化ではなく、ステークホルダー全体のWIN-WINを設計します。

ニーズ&ウォンツのWIN-WIN

参加者(求める者・求められる者)、さらには仲介者や運営者などのステークホルダーは、個人単位・組織単位でそれぞれ参加ニーズが異なります。これらのマッチングを高い精度で行い、エンドユーザー(参加者)とクライアント双方の満足を最大化することが本システムの目標です。

マッチングの指標

時間効率、趣味嗜好、個人特性など、視点を変えれば多様な指標が存在し、マッチングフローには複数の結果パターンが生まれます。そのなかから最善のパターンをピックアップすることが重要です。

アウトプットとしての可視化表示

各指標の表示方法は、定量的(数値・百分比・偏差値・順位・グラフ など)でも、定性的(大小・高低)でも構いません。表示デバイスも、スマートフォンやタブレットはもちろん、液晶ディスプレイ、さらにはホログラム画像による相性指標表示まで幅広く想定しています。

05. “合理的に・効率的に”、一期一会を創出する仕組み

プロダクト思想

本人が”戦略”を選べる状態こそが理想の出会いの場

POINT1人とじっくり話したいタイプも、複数人と効率的に会いたいタイプも、同じ場で同時に最適化されること。本システムは、参加者が自分のスタイルに合った戦略をリアルタイムに選び直せる状態を理想としています。

会話を深堀りすることが得意な人にとっては、1人の相手とじっくり対話するほうが充実するでしょう。一方で、それが苦手な人にとっては、同じ時間で別のターゲットを複数訪問するほうが効率的でしょう。

どちらが正解ということではなく、リアルタイムに本人が戦略を選べる状態こそが、望ましい形です。

ウェアラブルを活用し、相手側からの印象も相性指数に加算


感情分析・表情分析・会話の機械学習が導くもの

たとえば、目線が合う回数、瞳孔の広がり、笑顔の頻度、脈拍の上昇、声の高低差など。これらの非言語シグナルを統合的に解析することで、当人が自覚していない”惹かれ”のサインを、相性指数に反映していきます。

2014年のプレゼン発表では、会場のオーディエンスから笑いが起こりました。「婚活でそこまでやるのか?」という、半ば呆れと驚きの混じった笑いです。プレゼンの遊び心としても機能していました。

06. お節介な”デジタル仲人”のように、会話を補助する

会話支援

ベテラン仲人の所作を、データで再現する

POINT初対面どうしの男女の会話を、ベテラン仲人のように橋渡しするのが本システムのもうひとつの役割です。プロフィールから共通点を抽出し、最初の一言を支える”デジタル仲人”を目指しています。

初対面の男女の最初の会話。「今日は暑いですね」「雨の中、大丈夫でした?」――。緊張のあまり、雑談やアイスブレイクが続かない人もいるかもしれません。

かつてホテルのお見合い待合せに、ベテラン仲人のアシスタントとして同行したことがあります。ベテラン仲人は手慣れたもので、初対面どうしの男女のプロフィールをすべて事前に記憶しており、こんな具合に会話の橋渡しをしてくれました。

「男性Aさんはね、テニスをやっておられて、部長をされていたんですよ」
「女性Bさんは、お料理やお菓子がお好きみたいですよ」
「この後、お二人で色々とお話してみてくださいね」

手際よく5分ほど話したあと、仲人の私たちは退席。会話のキッカケとなるアイスブレイクのキーワードを伝えて、その場を立ち去るのです。

1対1なら可能でも、大勢が相手となると仲人にとっても至難の業です。この従来のお見合いの仕組みをデジタルシフトしたい――そう構想したのが本システムです。最終的な会話補助はAIが担いますが、データマイニングがあれば十分に実現可能です。

特許取得は、技術的な論理が成立していれば、開発実現性がややグレーであっても成立します。私は未来の世界の”デジタル仲人”をプロダクトとして構想したのです。

07. 感情分析・表情センシングという拡張機能

技術応用

楽しんでいるか? 不快なら話題を切り替える仕組み

POINT会話中の表情・反応をセンシングし、“その話題は不快かもしれない”というアラートを返す。本人すら気づかない違和感を可視化し、出会いの質を底上げするための機能群です。

空気を読む感度の高さが良いことか悪いことかはさておき、事態を好転させるためのアラートとして機能すると考えています。本人が気づいていない客観的な指摘から、新しい発見が生まれることもあるでしょう。

表情のセンシング技術の活用

その後、オムロン様の「OKAO® Vision」をはじめ、センシング技術の紹介事例は確実に増えてきました。北欧・北米では、表情から学習集中度を検知するプロダクトも公開されています。ARアプリ「Snow」のように、表情を使った技術が世のなかに浸透し始めています。

大量のペルソナ情報から、共通事項をフィルタリング

短時間での意気投合や、一流の雑談力には「相手情報のヒアリング」が含まれるそうです。とはいえ、誰もが営業マンのように得意というわけではありません。共通点の抽出は、会話を支える非常に重要なサポートになるはずです。

まとめ

POINT「イベント支援システム」は、ペルソナ情報とニーズ&ウォンツを軸に、感情分析・センシング・ウェアラブルなどの技術を組み合わせ、一期一会の出会いを”合理的に・効率的に”創出するためのプロダクト構想です。3度目の挑戦で個人として特許取得に至ったプロセスそのものが、私にとっての大きな学びになりました。

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