前談
応募記録
外国人エンジニアと地域課題をつなぐ、共生型ラーニングプラットフォーム構想
『X-Tech Innovation 2020』に応募したビジネスプランの記録です。
この企画では、IT人材不足、外国人支援、日本語学習、地域課題解決、地方企業のデジタルシフトをひとつにつなぐプラットフォームを構想しました。
日本では、少子化や地方の人材不足が進み、IT人材の確保も大きな課題になっています。一方で、日本で働きたい外国人エンジニアにとっては、日本語学習、生活手続き、就職準備、職場でのコミュニケーション、家族の教育支援など、多くのハードルがあります。
そこで私は、外国人エンジニアが日本語や職業スキルを学びながら、日本の地域課題にも参加できる仕組みを考えました。
結果として、1次選考の書類審査は通過しましたが、2次選考のプレゼンで落選しました。
ただ、当時考えていた「外国人エンジニア支援」と「地域課題解決」をつなぐ発想は、今振り返っても、教育・HR・地方創生・国際共生を横断するテーマだったと感じています。
この記事で整理していること
- X-Tech Innovation 2020への応募記録
- 日本のIT人材不足と外国人エンジニア活用の課題
- 外国人労働者や家族が日本で暮らす際の学習・生活課題
- 学校教育現場における英語・IT・オンライン授業対応の負担
- U30外国人エンジニアを対象にした顧客セグメント
- Webメディアとオンライン学習を組み合わせた価値提案
- LMS、日本語学習、地域課題投稿、MVP開発支援の構想
- 2次選考で落選した経験からの学び
スライド
01. プラン概要
プラン概要
IT人材不足・外国人支援・教育格差を横断して考える
このプランは、日本の少子化やIT人材不足を背景に、外国人エンジニアの活躍と地域課題解決をつなぐサービス構想です。
日本では、少子化によって地方の過疎化、産業の衰退、人材不足、後継者不足、事業承継、教育格差など、さまざまな課題が生まれています。
特にIT人材については、今後さらに不足が広がると考えられており、その解決策のひとつとして、外国人エンジニアの活躍が重要になると考えました。
ただし、外国人材を受け入れるには、就職先を用意するだけでは不十分です。
日本語学習、専門スキルの習得、職業訓練、日本での生活手続き、日本の慣習や文化の理解、家族の教育支援など、働く前後のサポートが必要になります。
コロナ禍で見えた課題
コロナ禍では、日本のデジタルシフトの遅さも大きな課題として見えてきました。
また、外国人労働者の解雇、非正社員への支援不足、オンライン教育への対応格差など、働く人・学ぶ人・支える側の課題が同時に表面化しました。
外国人にとっては、自分自身の就労だけでなく、扶養家族や子どもの保育、学校受け入れ、日本語学習、受験支援なども大きな不安になります。
学校教育現場にも負担がある
一方で、学校教育現場にも多くの課題があります。
- 外国人児童・生徒を受け入れるための語学対応や特別学級の不足
- 英語教育への対応強化
- プログラミング教育開始による教師のITスキル格差
- オンライン授業への対応による教育格差
- 部活動顧問としての時間拘束や休日対応
このように、外国人労働者側、教育現場側、自治体側、企業側には、それぞれ異なる課題があります。
そこで、オンライン学習、動画、電子書籍、LMS、地域課題投稿、MVP開発、就職支援などを組み合わせ、複数の課題を同時に支援できるSaaS型プラットフォームを構想しました。
リーンキャンパス

02. 日本のIT人材不足と外国人人材の活用
問題提起
IT人材不足を、外国人エンジニア支援と地域課題解決につなげる
日本では、少子化を背景に、さまざまな産業で人材不足が進んでいます。
中でもIT人材不足は深刻なテーマです。DX、Webサービス、業務システム、データ活用、AI、オンライン教育など、社会のあらゆる場面でIT人材が必要になっています。
この課題に対して、アジア圏を中心とした外国人エンジニアに日本で活躍してもらう流れは、今後さらに重要になると考えました。
2020年以降、学校教育でも英語やITが重視され、グローバルに活躍できる人材育成へのシフトが進んでいます。
その中で、日本の課題意識を持った大人や、日本を好きな外国人を巻き込み、子どもと大人が一緒に日本の社会課題を共有することが重要だと考えました。
外国人側の課題
外国人が「日本で稼ぎたい」「日本で学びたい」という高いモチベーションを持っていても、日本企業に就職し、日本へ移住し、働き続けるまでには多くのハードルがあります。
たとえば、次のような課題です。
- 日本語学習の負担
- 日本企業で働くための業務理解
- 就職活動や在留手続きの不安
- 住居探しや生活手続き
- 地域コミュニティへの適応
- 家族や子どもの教育環境
- 職場でのコミュニケーション
地方中小企業のデジタルシフトも課題
コロナ禍をきっかけに、社会のデジタルシフトは一気に進みました。
一方で、地方の中小企業や事業者の中には、その流れに十分対応できないまま、廃業や倒産のリスクを抱えるところもあります。
アナログであっても、日本を支えてきた技術やナレッジが失われることは大きな損失です。
事業承継や技術継承も、重要な地域課題です。
地方企業の魅力発信やデジタル化を支援できれば、まだ広く知られていない日本の製品や技術が注目される可能性もあります。
自治体側の課題と九州の可能性
自治体側には、地域の魅力をどう発信し、どう人材や企業とつなぐかという課題があります。
九州は、大自然、温泉、グルメなど、仕事以外の余暇を楽しめるスポットも豊富です。また、産業も多様に存在するため、地域課題の情報収集、ヒアリング、テストマーケティングもしやすい地域だと考えました。
外国人エンジニアにとっても、日本企業での就業経験に加え、日本の社会課題解決に参画できれば、学習機会、成長機会、人脈形成につながります。
将来的に母国へUターンした後も、日本で培った人脈や日本企業との関係を活かし、母国でのイノベーションに挑戦しやすくなるかもしれません。
4つのビジョン
ここまでの課題を踏まえ、解決に向けたビジョンを整理しました。
03. 顧客セグメント
顧客セグメント
在日前・就労前のU30外国人エンジニアを中心にする
このサービスのコアターゲットは、在日前、または就労前のU30外国人エンジニアです。
日本で働きたい、日本の技術や文化を学びたい、日本企業で経験を積みたいという意欲を持つ若いエンジニアに対して、学習、情報、交流、地域課題参加、就職支援を提供する構想です。
なぜU30外国人エンジニアなのか
若いエンジニアは、学習意欲や成長意欲が高く、キャリア形成の初期段階で日本との接点を持つことで、将来的な人材交流や事業連携につながりやすいと考えました。
また、日本側にとっても、単に人材不足を補うだけではなく、地域課題に関心を持つ外国人エンジニアと出会えることは、新しい視点やイノベーションのきっかけになります。
対象者が抱える主な不安
U30外国人エンジニアが日本で働く前後には、次のような不安があります。
- 日本語をどのレベルまで学べばよいのか
- 日本企業の働き方に適応できるか
- 就職活動で何をアピールすればよいのか
- 日本での生活手続きや住居探しができるか
- 家族を連れて日本で暮らせるか
- 日本人や地域コミュニティとつながれるか
このサービスでは、こうした不安を学習・情報・交流・実践経験によって減らすことを目指しました。
04. 独自の価値提案
価値提案
情報配信とオンライン交流を組み合わせたプラットフォーム
このサービスでは、大きく2つの提供方法を考えていました。
ひとつは、情報配信を主としたWebメディアです。
日本で働くための基礎情報、生活情報、地域情報、企業情報、学習コンテンツなどを整理し、外国人エンジニアが事前に学べる場を作ります。
もうひとつは、オンラインでの交流や学習指導です。
Live型の交流、情報交換、学習支援、地域課題に関するディスカッションなどを通じて、日本側の企業・自治体・教育機関・学生とも接点を作れる仕組みを想定しました。
単なる学習サービスではなく、参加型の共創基盤へ
この構想のポイントは、単に日本語や職業スキルを学ぶだけではないことです。
学習した人材が、日本の地域課題を知り、アイデアを出し、MVP開発に参加し、企業や自治体と接点を持てるようにすることを目指しました。
学習、交流、課題解決、就職支援を分断せず、ひとつの流れとして設計することが、このプラットフォームの特徴です。
学ぶだけでなく、実績を作れる場にする
外国人エンジニアが日本で就職する際には、スキルを証明する材料が必要です。
そこで、地域課題に対するMVP開発やアイデア投稿に参加できれば、ポートフォリオとして使える実績になります。
日本語を学ぶ、職業スキルを学ぶ、地域課題に参加する、成果物を作る、企業や自治体とつながる。
この一連の流れを支援することで、学習サービス以上の価値を提供できると考えました。
05. ソリューション案
学習設計
日本語・職業訓練・日本文化を学ぶ3つのカリキュラム
メインとなる学習カリキュラムは、以下の3つです。
- 日本語の学習(N4相当)
- 職業訓練(業務スキル)
- 日本文化や慣習の学習(座学)
また、学習や習得の環境は大きく2つに分かれます。
- 外国人の母国に在住しながら学ぶケース
- 在日後に、日本語学校や地域学習の場で学ぶケース

学習フェーズごとに必要な支援が変わる
来日前と来日後では、必要な情報や支援が異なります。
来日前は、日本語学習、就職情報、生活準備、文化理解などが重要になります。
来日後は、地域での生活、学校や職場でのコミュニケーション、家族の支援、悩み相談、就職後の定着支援などが必要になります。
そのため、各ステークホルダーが一元的に情報共有できるSaaS型プラットフォームが必要だと考えました。
学習内容を生活と仕事につなげる
日本語学習は、試験に合格するためだけのものではありません。
実際には、職場で質問する、上司に報告する、病院で症状を伝える、役所で手続きをする、学校からのお知らせを読むなど、生活と仕事の両方に関わります。
そのため、日本語、職業訓練、日本文化を別々に学ぶのではなく、実生活で使える形につなげる必要があると考えました。
06. LMSと日本語学習プロダクト
LMS構想
学習進捗を管理するラーニング・マネジメント・システム
LMSの開発
日本語学習、地域学習、職業訓練では、講師、生徒、法人企業、日本語学校、自治体など、多くのステークホルダーが関わります。
そのため、学習進捗、課題提出、学習履歴、相談履歴、地域課題への参加状況などを一元管理できるLMSが必要だと考えました。
日本語学習のためのメインツール
日本語学習ツールは、単に単語や文法を学ぶだけではなく、実際の生活や仕事で使えることを意識します。
また、学校教育現場では、プログラミング学習や総合授業の一環として、学生が地域課題を学び、グループワークでアイデアを出し、プラットフォーム上で発表する流れも想定しました。
複数の関係者が同じ情報を見られる価値
外国人エンジニアを支援するには、本人だけでなく、講師、企業、自治体、日本語学校などが連携する必要があります。
LMSがあれば、学習進捗、理解度、課題提出、相談内容、地域課題への参加状況を確認しやすくなります。
これにより、支援が属人的になりすぎず、関係者全体でフォローできる状態を作れます。
07. 地域課題投稿とMVP開発支援
共創プラットフォーム
学生・大人・外国人エンジニアが、地域課題に参加できる仕組み
このプラットフォームでは、学生だけでなく、大人や外国人エンジニアも地域課題に参加できるようにします。
日本全国、そして海外も含め、国籍を問わず、地域課題に対する解決プランを投稿できる仕組みです。
アイデアソンで終えてもよいですし、面白いと感じたエンジニアが、自主的にハッカソンのように試作品を開発して投稿することも想定しました。
NDAや公開範囲も管理する
地域課題の中には、公開範囲に注意が必要なものもあります。
そのため、YouTubeやSNSで紹介してよいか、NDAが必要か、どこまで公開できるかは、課題提供者が事前に明記できるようにします。
アイデアのみの提供者にも、公開や活用に関する承諾を得る必要があります。
外国人エンジニアにとってのメリット
外国人エンジニアにとっては、社会貢献性の高いMVP開発に参加することで、日本の人脈を広げることができます。
また、就職活動時のポートフォリオとしても活用できます。
日本企業に対して、自分の技術力だけでなく、日本の地域課題に関心を持ち、実際に開発へ参加した経験をアピールできます。
地域ブランディングにもつながる
地域課題に取り組むことは、観光や宿泊にもつながる可能性があります。
VRやオンラインで下見した地域に対して、実際に現地で体験したいという気持ちが生まれることもあります。
つまり、インバウンド観光客、地域ファン、地域ブランディングにもつながると考えました。
08. 廃校活用とイノベーション拠点
地域拠点
廃校を、職業訓練・IT研修・短期合宿の拠点にする
このサービスの拠点として、廃校活用も良いと考えていました。
廃校を、職業訓練、IT研修、授業サテライト発信基地、短期合宿所として活用するイメージです。
地方には、空き施設や使われなくなった学校があります。
一方で、外国人エンジニアや学生にとっては、短期滞在しながら学び、地域課題に触れ、プロトタイプを作る場所が必要です。
この両者をつなげることで、地域資源を活かした学習・共創拠点を作れるのではないかと考えました。
異なる人材が関わることで、イノベーションが起きやすくなる
この仕組みでは、異なるペルソナの人材が関わることを重視しています。
日本人学生、外国人エンジニア、地域事業者、自治体、学校、スタートアップ企業などが関与することで、日本と海外のリソースが掛け合わされ、イノベーションが生まれやすくなると考えました。
スタートアップ期のベンチャー企業にとっては、開発エンジニアと出会う場にもなります。
マーケティング視点では、地域や企業のファンが増え、将来的な購買者、情報発信者、販路拡大にもつながります。
09. 訪日後の支援と就職・生活サポート
訪日後支援
日本語学習、子どもの学習支援、求人HR、悩み相談までつなげる
訪日後の支援と就職・情報支援
訪日後の支援では、日本語学習だけでなく、生活全体を支える必要があります。
たとえば、通学できない子ども、パートで働きたいけれど日本語に不安がある配偶者、就業開始後に業務コミュニケーションで困っているエンジニアなど、支援が必要な人はさまざまです。
この構想では、そうした困っている人を助けたいという思想がありました。
アカデミック版として安価、または無償提供に近い形も想定
特に教育や生活支援に関わる機能は、アカデミック版として安価、または無償提供に近い形も考えていました。
日本で働く本人だけでなく、その家族や子どもまで支援することで、外国人材が安心して日本で暮らし、学び、働ける環境づくりにつなげたいと考えました。
日本語学習や地域学習では、講師、生徒、法人企業、日本語学校、自治体など、多くのステークホルダーが関わります。
そのため、LMSによる進捗管理が望ましいと考えました。
10. Appendix:参考資料
参考資料
提案内容を補足するスライド資料
最後に、提案内容を補足するAppendix資料です。
プランの背景、市場、ステークホルダー、学習・就職・地域課題連携の補足資料として整理していました。



Appendixを用意した理由
今回のプランは扱うテーマが広いため、すべてを本編だけで説明すると情報量が多くなりすぎます。
そこで、補足資料としてAppendixを用意し、必要に応じて背景や詳細を確認できるようにしました。
プレゼンでは、本編で伝えるべき内容と、補足資料に回す内容を分けることが重要だと感じました。
11. 参加して学んだこと
学び
大きな社会課題ほど、伝える順番と焦点が重要になる
この応募を通じて学んだのは、大きな社会課題を扱う場合ほど、伝える順番と焦点が重要になるということです。
今回のプランでは、IT人材不足、外国人支援、日本語学習、職業訓練、地域課題、地方企業、廃校活用、就職支援、家族支援など、多くの要素を組み込みました。
構想としては広がりがある一方で、2次選考のプレゼンでは、どの課題を最優先に解決するのか、誰にとっての価値を最初に届けるのかを、もっと絞って伝える必要があったと感じています。
学びになったポイント
- 社会課題型のプランでは、課題の広さよりも最初の顧客課題を明確にする必要がある
- 外国人支援、教育、地域課題、HRをつなぐ場合、フェーズを分けて説明した方が伝わりやすい
- LMSやSaaS構想は、誰が最初に使うのかを具体化する必要がある
- 地域課題への参加は、学習・就職・観光・ブランディングを横断できる可能性がある
- 2次選考では、構想の大きさだけでなく、実現順序と収益化の見せ方が重要になる
今ならどう整理するか
今なら、最初のMVPはもっと絞ると思います。
たとえば、まずは「在日前のU30外国人エンジニア向け日本語・就職準備LMS」に絞り、その後に地域課題投稿やMVP開発支援へ広げる形です。
最初からすべてを実現しようとすると、価値が伝わりにくくなります。
誰の、どの課題を、最初に解決するのか。
その焦点を明確にしたうえで、将来的な拡張として地域課題や廃校活用、HR支援につなげる方が、プレゼンとしては伝わりやすかったと感じています。
12. まとめ
まとめ
外国人エンジニアと地域課題をつなぐ、共生型プラットフォーム構想
『X-Tech Innovation 2020』に応募したこのプランは、外国人エンジニア支援と日本の地域課題解決をつなぐ構想でした。
日本では、IT人材不足、少子化、教育格差、地方企業のデジタルシフト、事業承継など、多くの課題が重なっています。
一方で、日本で働きたい外国人エンジニアにとっても、日本語学習、生活手続き、職業訓練、家族の教育、就職後の定着など、多くの支援が必要です。
この両者をつなぐために、Webメディア、オンライン学習、LMS、地域課題投稿、MVP開発、就職支援、生活相談を組み合わせたプラットフォームを考えました。
結果として、1次選考は通過したものの、2次選考のプレゼンで落選しました。
しかし、この応募を通じて、社会課題をサービスに落とし込む難しさ、構想を絞って伝える重要性、そして「共に生きる」ための仕組みづくりの必要性を学びました。
この経験は、その後の教育、HR、地方創生、プロダクト企画を考えるうえでも、大切な実践記録になっています。
この企画で得た学び
- 外国人支援は、就職支援だけでなく生活・家族・学習支援まで含めて考える必要がある
- IT人材不足と地域課題解決は、設計次第でつなげられる
- LMSやSaaSは、誰が最初に使うのかを明確にすることが重要
- 大きな構想ほど、MVPの切り出し方が評価を左右する
- 地域課題に参加する経験は、外国人エンジニアのポートフォリオにもなり得る
- 教育、HR、地方創生、国際共生は、今後も横断的に考える価値がある




















































