前談
高知の地域課題を、プログラミング学習と人材育成につなげる構想
この企画は、高知県が抱える地域課題を題材に、子ども向けのプログラミング学習と、見習いエンジニア向けの実践型ポートフォリオ開発を結びつける事業アイデアです。
高知県は、人口減少、産業の担い手不足、中山間地域の課題、一次産業の課題、観光や移住促進など、さまざまな社会課題を抱える「課題先進県」として語られることがあります。
一方で、こうした地域課題は、単に行政や事業者だけが向き合うものではありません。子ども、学生、エンジニア、企業、県外の人、移住に関心のある人など、さまざまな立場の人が学び、考え、関わるテーマにもなり得ます。
そこで私は、高知県の地域課題を「学習テーマ」として全国に開き、子どもたちには地域課題を考える授業として、見習いエンジニアには実践的な開発テーマとして活用する構想を考えました。
司会パンダ この記事で整理していること
- 高知県を課題先進県として捉えた事業背景
- 地域課題解決に取り組む事業者が抱えるIT面のボトルネック
- 子ども向けプログラミング学習サービスの構想
- 地域学習・課題学習・感動体験を組み合わせた授業モデル
- 全国の学校や家庭を巻き込むステークホルダー拡大の考え方
- 見習いエンジニア向けのポートフォリオ開発マッチング構想
- 高知県と受講生の双方にメリットを生む仕組み
- 日本の地域課題に対する当事者意識を育てる狙い
00.スライド紹介
01. 事業背景
課題先進県の高知には、各産業別に多くの課題がある
高知県は、課題先進県として、各産業ごとに多くの課題を抱えていると伺っています。
たとえば、一次産業の担い手不足、人口減少、中山間地域の交通や生活インフラ、観光資源の活用、地域産業の継承、若者の県外流出など、地域によってさまざまな課題があります。
これらの課題は、一つひとつが複雑で、簡単に解決できるものではありません。
しかし、課題が多いということは、裏を返せば、学びの題材や新しい事業テーマが多いということでもあります。
地域課題にITやテクノロジーを掛け合わせる
地域課題の解決には、現場理解だけでなく、ITやテクノロジーの活用も必要不可欠だと考えました。
たとえば、農業や漁業の効率化、観光情報の可視化、移住希望者向けの情報提供、地域交通の支援、教育コンテンツの共有など、ITが関われる領域は多くあります。
ただし、地域の課題を持つ人が、すぐにITプロダクトを作れるとは限りません。アイデアはあっても、要件定義、プロトタイプ開発、エンジニアとの連携、予算確保などでつまずくことがあります。
そこで、地域課題を持つ人と、学習・開発の場を求める人をつなげる仕組みがあれば、双方にとって価値があるのではないかと考えました。
司会パンダ 02. 地域課題解決で起きるボトルネック
起業家や事業者が、ITマネジメントとプロトタイプ開発でつまずく
地域課題を解決したいと考える事業者や起業家は多くいます。
しかし、実際に事業を前に進めようとすると、ITに関わるマネジメントの難しさや、少ない資本金でプロトタイプを作れないことが大きなボトルネックになります。
アイデアがあっても、誰に相談すればよいかわからない。エンジニアに依頼したくても、予算感が合わない。プロトタイプを作りたいが、要件をうまく整理できない。こうした理由で、事業ドライブが遅れたり、途中で頓挫するケースもあるのではないかと感じました。
私が感じた2つの印象
この課題に対して、私は大きく2つの印象を持ちました。
- 全国的に、この課題を考えていく仕組みを構築できないだろうか。
- スタートアップや個人事業主が、もっと実行しやすくするにはどうすればよいだろうか。
地域課題に悩む高知県の方々と、プロトタイプ開発に悩む企業や起業家。そして、実践経験を積みたい全国のエンジニア。
この三者をうまくつなげることができれば、地域課題解決と人材育成を同時に進められる可能性があります。
コンテストやハッカソンも、有効な接点になる
経験のあるプログラマーに参加してもらうには、コンテストやハッカソンなどのイベントも有効だと考えました。
地域課題を題材にしたハッカソンを開催すれば、エンジニア、デザイナー、プランナーが課題に触れながら、短期間でアイデアやプロトタイプを生み出すことができます。
また、法人研修やモクモク会、プログラミングスクールの課題としても活用できます。
単なる学習課題ではなく、実在する地域課題を扱うことで、参加者はより強い当事者意識を持って取り組めると考えました。
司会パンダ 03. 事業サービスの全体像
高知の課題先進県の事例を、日本国民の学習テーマにする
この企画で大切にしたかったのは、高知県の課題を高知県だけの問題として閉じないことです。
高知県が抱える課題の多くは、将来的に日本の他地域でも起こり得る課題です。人口減少、担い手不足、地域産業の継承、交通や医療、教育の課題は、全国の地域に広がっていく可能性があります。
だからこそ、高知の課題先進県としての事例を、日本国民の学習テーマとして開いていくことに価値があると考えました。
子ども向けと成人向け、2つの事業サービスを提案
この構想では、大きく2つの事業サービスを想定しました。
1つ目は、子ども向けのプログラミング学習サービスです。高知県の地域課題を題材にしながら、学校教育や地域学習の中で、課題解決の考え方やプログラミングの概念を学ぶサービスです。
2つ目は、成人向け、特に見習いエンジニアやプログラミングスクール受講生向けの実践型開発マッチングサービスです。地域課題や小学生のアイデア、スタートアップのビジネスアイデアを題材に、ポートフォリオ開発として挑戦できる仕組みを考えました。
地域課題を、学びと実践の共通テーマにする
子どもにとっては、地域課題を知ることが、社会や地元への関心につながります。
見習いエンジニアにとっては、地域課題を題材にした開発が、要件定義やUI設計、実装、発表の経験につながります。
事業者にとっては、自分たちだけでは形にできなかったアイデアを、外部の学習者やエンジニアと一緒に育てるきっかけになります。
このように、地域課題を共通テーマにすることで、教育、人材育成、事業開発、地域活性化をつなげられると考えました。
司会パンダ 04. 小学校でのプログラミング学習
教科学習と地域課題をつなげるプログラミング教育
小学校でのプログラミング学習では、単にコードを書くことだけが目的ではありません。
大切なのは、身近な課題を見つけ、どのように解決できるかを考え、順序立てて表現する力を育てることです。
高知県の地域課題は、その題材として非常に相性が良いと考えました。
現場の課題と需要
教師のITスキルには個人差があり、学校や地域によっても差があります。
プログラミング教育のスタート期には、「どのような授業をすればよいのか」「国語・算数・理科・社会・地域学習とどう結びつければよいのか」と悩む先生も多いと思います。
そのため、授業レシピや指導ノウハウを共有できる仕組みが必要だと考えました。
授業レシピと指導ノウハウをナレッジ共有する
現場の先生がゼロから授業を組み立てるのは大変です。
そこで、地域課題を題材にした授業レシピや、過去の実践事例、使えるワークシート、動画教材、発表テンプレートなどを共有する仕組みがあると、導入しやすくなります。
たとえば、以下のような授業レシピが考えられます。
- 高知県の農業課題を調べ、解決アイデアを考える授業
- 中山間地域の交通課題を題材に、移動支援アプリを考える授業
- 地域の観光資源を紹介するWebページを作る授業
- 高齢者の生活課題をテーマに、見守りアイデアを考える授業
- 地元の課題を調査し、新聞・動画・スライドで発表する授業
プログラミングを「コードを書く授業」だけに限定せず、課題を分解し、手順を考え、表現する学びとして広く設計することが重要だと考えました。
司会パンダ 05. 地域学習と感動体験を組み合わせる
高知県の地域学習を、心が動く学びに変える
理想の授業モデルの一つとして、ハッカソンのような感動体験を参考にしました。
ハッカソンでは、参加者が課題を知り、チームで考え、短時間でアイデアを形にし、最後に発表します。その過程には、調査、議論、試行錯誤、制作、発表、フィードバックが含まれます。
この流れは、学校教育にも応用できると考えました。
地域課題を映像で知る
まず手始めに、高知県の課題についての取材動画を生徒に視聴してもらいます。
文章だけで課題を学ぶよりも、現地の人の声や風景、困りごとの背景を映像で見ることで、子どもたちは課題を自分ごととして捉えやすくなります。
そのうえで、プログラミングやIoTの考え方も学び、「この課題に対して、どのような仕組みがあれば役に立つだろうか」と考えていきます。
地域学習 × 課題学習 × 感動体験
私が最も大切にしたい指導テーマは、地域学習、課題学習、感動体験を組み合わせることです。
地域について知るだけではなく、課題を考え、自分たちなりの解決策を発表する。さらに、友達や先生、地域の人から反応をもらう。
その一連の体験が、子どもたちにとって強い学びになると考えました。
アウトプットはプログラムだけでなくてよい
一般的なワークショップでは、クラスメイトを複数の班に分けて、アイデアソン形式でディスカッションする形式が多いと思います。
ただし、アウトプットは必ずしもアプリや電子工作である必要はありません。
プログラミングやIoTの概念を学びながら、スライド制作、動画、CM、新聞、ポスター、Webページなどで表現することもできます。
大切なのは、地域課題を理解し、解決策を考え、人に伝えることです。
その過程で、論理的思考、情報整理、表現力、チームで考える力を育てられると考えました。
司会パンダ 06. ステークホルダーを拡大する構想
学校・家庭・地域・開発者をつなぎ、課題解決の輪を広げる
高知県の課題学習は、高知県内だけで完結させる必要はありません。
他県の学校でも、自分たちの地域と比較しながら授業を行うことができます。
たとえば、「高知県の中山間地域の課題」と「自分たちの地域の交通課題」を比べたり、「高知県の農業課題」と「自分たちの県の産業課題」を比べたりすることで、地域課題をより広い視点で考えることができます。
家庭での親子会話にも広げる
地域課題を学校だけで扱うのではなく、家庭での親子会話にも広げることができます。
子どもが学校で考えた解決アイデアを家に持ち帰り、親子で話し合う。家庭で出た意見をコメント投稿する。地域の人や開発者が、そのアイデアに反応する。
こうした流れができれば、学びが教室の中だけで終わらず、家庭や地域へ広がっていきます。
小学生のアイデアを、開発者が支援する
小学生が考えたアイデアは、すぐに開発するのが難しい場合もあります。
しかし、そのアイデアに共感する開発者や大人がいれば、アドバイスやプロトタイプ制作につなげることができます。
たとえば、掲示板や投稿機能を通じて、子どものアイデアに対して、全国の開発者がコメントしたり、実現方法を提案したり、簡単なサンプルを作ったりする仕組みが考えられます。
高知出身の大人や、地域課題に関心のあるエンジニアが参加すれば、子どもたちにとっても大きな刺激になります。
司会パンダ 07. 見習いエンジニア向けの構想
地域課題を、ポートフォリオ開発の実践テーマにする
次に考えたのが、見習いエンジニア向けのサービスです。
プログラミングスクールや独学で学ぶ人にとって、学習後に何を作るかは大きな課題です。
教材の課題をこなすだけでは、実際の仕事に近い要件定義や課題整理、ユーザー理解、実装判断を経験しにくいことがあります。
そこで、高知県の地域課題や、子どもたちが考えたアイデア、スタートアップ起業家のビジネスアイデアをテーマに、見習いエンジニアがポートフォリオ開発として挑戦できる仕組みを考えました。
プログラミング学校での課題
プログラミング学校では、受講生が学習後にポートフォリオを作ることが多くあります。
しかし、ポートフォリオのテーマ選びで悩む人も多いと思います。
よくあるサンプルアプリだけでは、差別化が難しいこともあります。実務経験がない場合、どのように課題を見つけ、要件に落とし込み、ユーザーにとって価値のあるものにするかを学ぶ機会も限られます。
高知県の人材募集メッセージとの接点
高知県が人材募集や移住促進の中で発信しているメッセージと、見習いエンジニアの実践機会を結びつけることもできると考えました。
地域課題に関わる開発テーマに取り組むことで、受講生は高知県の課題や魅力に触れることになります。
その経験が、将来的に高知県への関心、移住意欲、地域プロジェクトへの参加につながる可能性もあります。
司会パンダ 08. 私が考える解決策
地域のアイデアと見習いエンジニアをつなぐ実践型マッチングサービス
私が考える解決策は、小学生が考えたアイデアや、スタートアップ起業家のビジネスアイデアをテーマに、見習いエンジニアの受講生がポートフォリオ開発としてチャレンジできるマッチングサービスです。
地域課題を持つ人は、アイデアを投稿します。
見習いエンジニアは、その中から自分が関心を持てるテーマを選び、講師やメンターに相談しながら、要件定義、UI設計、開発、発表まで取り組みます。
受講生にとってのメリット
受講生にとっては、実在する課題を題材に開発できることが大きなメリットです。
単にアプリを作るだけではなく、依頼者の背景を理解し、何を解決すべきかを整理し、実装可能な範囲に落とし込む経験ができます。
さらに、依頼者からのコメントやフィードバックがあれば、転職活動時のアピールにもなります。
- 実在する課題をもとに要件定義を経験できる
- 講師やメンターに相談しながら開発できる
- 成果物をポートフォリオとして掲載できる
- 依頼者からのコメントを実績として活用できる
- 地域課題への理解を深められる
高知県や事業者にとってのメリット
高知県や地域事業者にとっては、自分たちだけでは形にできなかったアイデアを、プロトタイプとして試せる可能性があります。
もちろん、見習いエンジニアの成果物がそのまま事業化できるとは限りません。
しかし、アイデアを画面や簡易プロトタイプとして可視化できるだけでも、次の議論がしやすくなります。
また、県外のエンジニアが高知県の課題に触れることで、高知との継続的なコミュニケーションが生まれる可能性もあります。
高知県と受講生のWIN-WINをつくる
この構想では、高知県と受講生の双方にメリットがある状態を目指しました。
高知県側は、地域課題やアイデアを全国の学習者・開発者に知ってもらえる。
受講生側は、実践的な開発テーマを得られる。
さらに、開発を通じて高知県との接点が生まれれば、将来的な移住や地域プロジェクト参加につながる可能性もあります。
司会パンダ 09. 日本の課題解決への当事者意識
課題先進県の問題を、全国で考えるテーマにする
この企画で最後に伝えたかったのは、日本の課題解決に対する当事者意識です。
課題先進県が抱える問題を、幅広い世代に、そして全国に認知してもらうことが大切だと考えました。
高知県の課題は、高知県だけのものではありません。
人口減少、地域産業の担い手不足、教育格差、交通課題、移住促進、地域経済の活性化などは、日本全体が向き合うテーマでもあります。
坂本龍馬のような心意気を広げる
高知といえば、坂本龍馬を思い浮かべる人も多いと思います。
今後の日本をより良くするために、地域課題を自分ごととして考え、行動する人を増やしていく。
そのような心意気を、日本中に広げられればよいと考えました。
子どもが地域課題を学び、家庭で話し合い、見習いエンジニアがプロトタイプを作り、地域事業者がフィードバックを返す。
そのような小さな循環が生まれれば、課題解決に関わる人の輪は少しずつ広がっていきます。
学びを、社会との接点に変える
この構想は、単なる教育サービスでも、単なる開発マッチングサービスでもありません。
地域課題を題材に、子どもたちが考え、大人が支援し、エンジニアが実装に挑戦し、地域が反応する。
その循環を作ることで、学びを社会との接点に変えることを目指しました。
司会パンダ 10. まとめ
地域課題を、子どもの学びとエンジニア育成につなげる
この企画では、高知県の地域課題を、子ども向けのプログラミング学習と、見習いエンジニア向けの実践型開発テーマに展開する構想を考えました。
高知県は課題先進県として、多くの地域課題を抱えています。
しかし、その課題は、見方を変えれば、日本の未来を考えるための学習テーマにもなります。
子どもたちは、地域課題を題材に、社会を知り、考え、アイデアを出すことができます。
見習いエンジニアは、実在する課題を題材に、要件定義やプロトタイプ開発に挑戦できます。
地域事業者や高知県にとっては、アイデアを全国へ開き、外部の学習者や開発者とつながるきっかけになります。
この企画で大切にしたこと
今回の企画で大切にしたことは、以下の点です。
- 高知県の地域課題を、全国の学習テーマとして開くこと
- プログラミング教育を、地域学習や課題解決学習と結びつけること
- 子どものアイデアを、家庭や地域、開発者との接点につなげること
- 見習いエンジニアに、実践的なポートフォリオ開発の機会を提供すること
- 地域課題解決と人材育成を、同時に進める仕組みを考えること
- 日本の課題解決に対する当事者意識を広げること
地域課題は、誰か一人が解決するものではありません。
子ども、家庭、学校、地域、企業、エンジニア、行政など、さまざまな人が関わることで、少しずつ解決に近づいていくものだと思います。
この企画は、その入口として、高知県の課題を学びと実践の場に変えることを目指した提案でした。
司会パンダ













































