2019年に開催された「クルマとスマホをなかよくする SDLアプリコンテスト 2019」にて、個人応募作品「優良ドライバーチェッカー」を発表し、グランプリを受賞しました。

「優良ドライバーチェッカー」は、ドライバーの運転レベルを測定し、リアルタイムでアドバイスするアプリ構想です。車載情報、アプリ、JINS MEMEなどのIoTデバイスを組み合わせ、運転中の確認不足、眠気、姿勢、車間距離、脇見運転などをチェックしながら、教習所の教官のように運転をサポートすることを目指しました。
この記事では、東京と大阪のハッカソン参加から作品応募、開発で苦労したこと、グランプリ受賞、そして発表スライドで伝えた未来構想までを振り返ります。
司会パンダ 

01. 優良ドライバーチェッカーとは
「優良ドライバーチェッカー」は、ドライバー自身が気づきにくい運転の癖や注意不足を可視化し、より安全な運転につなげるためのアプリ構想です。
ゴールド免許を持っているからといって、必ずしも運転スキルが高いとは限りません。運転頻度が少ないことで減点や違反がなく、結果としてゴールド免許になっているケースもあります。
私自身も運転機会が少なくなったことでゴールド免許になりましたが、久しぶりにレンタカーを運転すると、慣れない車のブレーキ加減、目視確認、車線変更などに不安を感じることがありました。
そこで、運転中の行動をリアルタイムにチェックし、教習所の教官のように「今の確認は不足していたかもしれない」「次はここを意識しよう」とアドバイスしてくれるサービスを考えました。
司会パンダ 02. グランプリ受賞
「優良ドライバーチェッカー」は、SDLアプリコンテスト2019に個人応募した作品です。最終選考でプレゼン発表を行い、グランプリを受賞することができました。
開発者としてはまだ未熟な部分が多く、実装も完璧ではありませんでした。それでも、課題設定、社会性、車載情報とアプリをつなぐ構想、JINS MEMEを活用した独自性、未来のサービス像を評価いただけたことは、とても大きな経験になりました。
受賞の瞬間は、これまで東京と大阪のハッカソンで得た学び、相談に乗ってくださった方々、発表直前まで粘った開発と動画制作の時間が一気につながった感覚がありました。


司会パンダ 03. 参加から受賞までの流れ
この作品は、最初から完成形として生まれたものではありません。東京と大阪のハッカソンに参加し、そこで得た知識、出会い、フィードバックを積み重ねながら、少しずつ形になっていきました。
東京ハッカソンでアイデアが生まれる
2019年7月に参加した「SDLアプリコンテスト2019に応募しようぜハッカソン@東京」では、私は実装までは行わず、アイデアソン形式の発表を行いました。
その場で「優良ドライバーチェッカー」の企画が生まれました。車載情報とアプリをつなぐSDLの可能性を知り、さらに会場でJINS MEMEの存在を教えてもらったことで、運転中の視線や姿勢を活用した安全運転支援という構想が膨らみました。
大阪ハッカソンで実装に挑戦
2019年9月には「SDLアプリコンテスト2019に応募しようぜハッカソン@大阪」に参加しました。ここでは、企画を発表するだけでなく、自分でも実装方法を学びながら応募作品として仕上げることを目指しました。
その後、2019年10月末にコンテストへ応募し、最終選考へ進出。発表直前にはレンタカーを借りて動画撮影を行い、スライドとデモ映像を組み合わせたプレゼンを準備しました。
- 2019年7月:東京ハッカソンで「CarEng」MVP受賞とアイデア発表
- 2019年8月:JINS MEMEを購入
- 2019年9月:大阪ハッカソンで実装に向けて開発修行
- 2019年10月:コンテスト一次選考へ応募
- 2019年11月:最終選考で発表し、グランプリ受賞


04. 私の独自性と差別化ポイント
他の応募作品との差別化として大きかったのは、単なる車載アプリではなく、IoTデバイス、運転スキルの可視化、社会課題へのアプローチを組み合わせた点です。
特にJINS MEMEを活用し、首振り、まばたき、眠気、姿勢などの情報を運転チェックに使えないかと考えたことが、この企画の特徴になりました。
差別化のポイント
- JINS MEMEというメガネ型IoTデバイスを利用したこと
- 東京と大阪の2つのハッカソンに参加して企画を磨いたこと
- 開発エンジニアではない立場から、実装に挑戦したこと
- 免許返納、あおり運転、交通事故削減などの社会課題を企画に入れたこと
- 車載情報とアプリをつなぐSDLだからこその未来構想を発表に盛り込んだこと
この企画は、ハッカソン会場で得た情報と、自分自身の経験が混ざり合って生まれたものです。教育業界でのオンライン教育サービス立ち上げ、ソーシャルゲームのゲーミフィケーション、顔認証や感情分析への関心などが、運転スキルの診断と指導という形に結びつきました。


05. JINS MEMEを使いたかった理由
「なぜJINS MEMEを使おうと思ったのか」という質問は、会場でも多くいただきました。
きっかけは、東京ハッカソンでの雑談でした。初日のランチタイムに、参加していたエンジニアの方からJINS MEMEというデバイスの存在を教えてもらいました。
JINS MEMEには、首振り、まばたき、眠気、姿勢などを取得できる特徴があります。これを運転中の確認行動や注意力のチェックに使えれば、視線確認や巻き込み確認の不足を可視化できるのではないかと考えました。
JINS MEMEでやりたかったこと
- 左折時の巻き込み確認をチェックする
- 信号や標識を見たかどうかを確認する
- 歩行者や自転車への注意確認を促す
- 眠気や姿勢の乱れを検知して休憩を促す
特にやりたかったのは、左折時の巻き込み確認です。教習所で習う基本的な確認行動を、アプリとIoTデバイスで支援できれば、ドライバー自身が自分の確認不足に気づくきっかけになります。

06. 開発で苦労したこと
一番苦労したのは、JINS MEMEを使った実装環境です。JINS MEMEは発売から数年が経過していたため、当時の開発記事やサンプルが古く、最新環境でそのまま動かすことが難しい状態でした。
MonacaでJINS MEMEプラグインを利用する開発環境を選択しましたが、Cordovaのバージョン差分によりエラーが発生し、素人では原因の切り分けが難しい場面も多くありました。
応募締切や決勝大会が迫る中で、メーカーへ問い合わせながら実装を進める必要がありました。今振り返ると、実装力不足を痛感する一方で、わからない状態でも調べ、質問し、形にしようとする経験が大きな学びになりました。

司会パンダ 07. 発表スライドで伝えた課題
ここからは、当時の発表スライドをもとに、企画で伝えた内容を整理します。
優良ドライバーチェッカー
発表では、最初に「あなたの運転レベルを測定し、アドバイスするアプリ」として、優良ドライバーチェッカーのコンセプトを提示しました。

免許返納という社会課題
2019年当時、免許返納は社会的にも大きなテーマになっていました。高齢者にとって、車は生活必需品である一方、運転スキルの衰えを自分で認めることは簡単ではありません。
田舎ではバスの本数が少なく、車がないと買い物や通院にも困ることがあります。しかし、たった一度の交通事故で、自分や他人の人生を大きく変えてしまう怖さもあります。

あおり運転という社会課題
あおり運転も、2019年当時に大きく注目されたテーマでした。急な割り込み、車線変更、急ブレーキなどにより、ドライバー自身が気づかないうちに他のドライバーへ不安や怒りを与えてしまうこともあります。
自分では普通に運転しているつもりでも、他者から見ると危険に見える運転があるかもしれません。だからこそ、第三者的に運転をチェックする仕組みが必要だと考えました。

事故原因の共通点は見ることと確認すること
交通事故の原因を見ていくと、上位には安全不確認、脇見運転、動静不注視などが並びます。そこから見えてくる共通点は、「見る」「確認する」という視覚や注意力の問題です。
そこで、JINS MEMEのようなデバイスを使い、ドライバーが本当に確認しているかをチェックする構想につながりました。

ゴールド免許でも運転スキルが高いとは限らない
発表では、ゴールド免許の課題にも触れました。ゴールド免許は優良運転者の証ではありますが、ペーパードライバーも含まれています。
運転しないことで違反がない人と、日常的に安全運転を続けている人を、同じように「運転が上手い」と見るのは少し違うのではないか。この疑問も、運転スキルを測るアプリを考える理由になりました。

08. サービスコンセプト
優良ドライバーチェッカーのサービスコンセプトは、「リアルタイムでの運転診断と指導をしてくれる、教習所の教官のようなサービス」です。
交通事故を減らすだけでなく、ドライバー自身が自分の運転傾向に気づき、次の運転で改善できるようにすることを目指しました。

個性的な教官キャラクターが指導する
アプリ内では、個性的な教官キャラクターが運転を指導する構想にしました。助手席にいる家族や友人から運転を注意されると、車内の空気が悪くなることがあります。
しかし、アプリ上のキャラクターが注意してくれるなら、ドライバーも受け入れやすくなるかもしれません。真面目すぎる安全運転アプリでは継続利用が難しいため、キャラクター性やゲーミフィケーションの要素も盛り込みました。
- 厳しく指導する「鬼教官モード」
- 面白く和ませる「コミカル教官モード」
- やさしく癒す「癒し教官モード」

JINS MEMEで首振りやまばたきを検知する
JINS MEMEには、首振り、まばたき、眠気、姿勢などを検知する機能があります。これらを運転チェックに活用することで、確認不足や眠気、姿勢の乱れなどに対してアラートや指導を行うことができます。

09. SDLだから広がる車載情報との連携
SDLの魅力は、車載情報とアプリをつなげられる点です。アクセル、ブレーキ、ウインカー、車間距離、シートベルトなどの車載情報をトリガーとして、アプリ側で運転判定、成績管理、クイズ、録画連携などを行う構想を描きました。
さらに、天気予報、交通情報、料金支払、音声AIなどのAPI連携を組み合わせることで、運転環境や車内環境の条件から事故が起こりやすい状況を推定できる可能性もあります。
目的地、同乗者、天候、混雑情報、ルート上の事故多発エリアなどを事前に把握できれば、ドライバーに対して「この先は事故が多いエリアです」「路地なので徐行しましょう」といった注意喚起も可能になります。

10. 利用の流れ
利用の流れは、運転開始前のアプリ起動から始まります。JINS MEMEを装着し、目的地や同乗者情報を登録して、運転環境を把握します。

運転開始前にアプリを起動する
まず、車に乗り込んだらアプリを起動し、JINS MEMEを装着します。運転中に必要な情報を取得できる状態にしてから、ドライブを開始します。

目的地と同乗者情報を登録する
次に、目的地を登録してカーナビと連携します。ルート上の事故多発エリアや、他ユーザーの運転ミスが多いエリアを事前に把握することで、注意すべきポイントをドライバーに知らせることができます。
また、同乗者構成、天候、混雑情報などを組み合わせることで、運転環境をより細かく把握できます。

11. 左折時の巻き込み確認をチェックする
私がJINS MEMEで特に実現したかったのが、左折時の巻き込み確認です。左折時には、ウインカー、減速、サイドミラー確認、巻き込み確認、歩行者確認など、複数の行動が必要になります。
これらの確認行動を、車載情報とJINS MEMEの視線・首振り検知を組み合わせてチェックできれば、ドライバーが「確認したつもり」になっている場面を減らせるのではないかと考えました。

左折時のチェックフロー
- 交差点30m前になる
- 左折ウインカーを出す
- ブレーキで減速する
- サイドミラーを確認する
- 左側の原付バイクなどを巻き込み確認する
- 道路の左に車体を寄せる
- さらに減速する
- 歩行者や自転車を確認する
- ハンドルを切って左折する

アプリ利用イメージ
実際の利用イメージとして、レンタカーで撮影した走行映像とアプリ画面を組み合わせました。運転中の動きとアプリ上の判定を重ねることで、発表時にもサービスの利用シーンが伝わりやすくなりました。

司会パンダ 12. 眠気、脇見、姿勢を検知する
左折時の確認以外にも、JINS MEMEの機能を使えば、眠気、脇見、姿勢の乱れなどを検知できる可能性があります。
居眠り運転
たとえば、アクセル稼働中に一定時間まぶたを閉じている場合、眠気の兆候としてアラートを出すことができます。長距離運転や夜間運転では、こうした検知が事故防止につながる可能性があります。

脇見運転
下を向きすぎたり、前方から視線が外れ続けたりした場合は、脇見運転として注意を促します。スマホやナビに気を取られる場面は誰にでもあり得るため、自然なアラートが重要です。

姿勢検知
姿勢のブレや落ち着きのない動きが続く場合は、休憩や体操を促すこともできます。運転は体調や集中力の影響を受けるため、単なる操作ミスだけでなく、身体状態にも目を向ける必要があります。

13. アプリの未来構想
発表では、実装済みの範囲だけでなく、将来的に実現したい構想も伝えました。交通事故の削減につなげるためには、運転中のリアルタイム検知だけでなく、長期的なデータ分析や学習体験も重要です。

車間距離の詰めすぎを検知する
距離センサーなどを活用すれば、車間距離の詰めすぎも検知できると考えました。前方車両との距離が近すぎる場合、教官キャラクターが注意喚起することで、あおり運転の抑止にもつながる可能性があります。

感情分析で荒い運転を抑える
怒りや焦りは、荒い運転につながる可能性があります。平常時の運転データと比べてブレーキや車間距離、操作の荒さに変化が出た場合、ドライバーの状態に合わせて注意喚起できるかもしれません。
一方で、楽しいドライブ体験を高めることも重要です。安全を損なわない範囲で、音楽、会話、クイズ、ミッション達成などを組み合わせれば、継続して使いたくなる運転支援アプリにできると考えました。

画像認証で標識や信号を検知する
画像認証を使えば、標識、信号の色、歩行者、自転車などを検知し、危険予知やクイズ形式の学習にも発展できます。
当時はIBM WatsonのVisual Recognitionを使って画像認証のテストも行いました。実用化には精度向上が必要ですが、標識や道路状況を認識できれば、運転中の注意喚起や運転後の振り返りに活用できます。


路地や歩行者への注意喚起
歩行者や自転車を検知できれば、事故が多い路地では事前に注意喚起できます。たとえば「路地だから徐行運転しましょう」「自転車が飛び出してくるかもしれません」といったナビの声かけが可能になります。

14. 運転後の成績管理と振り返り
優良ドライバーチェッカーでは、運転後の成績管理も重要な体験として考えました。運転中のアラートだけで終わらせるのではなく、その日の運転結果を振り返ることで、次回の改善につなげることができます。
勉強やスポーツと同じように、「ここはミスしやすい」「次は同じミスをしないように」と具体的に指摘されることで、スキルは定着しやすくなります。
運転後に総評を表示し、過去の運転履歴と比較できれば、上達度や習熟度が見えやすくなります。全国平均やエリア別の偏差値、ランキングなどを表示することで、ドライバー自身が自分の運転レベルを客観的に把握できるようになります。

ビッグデータで描く安全運転の未来
中長期で多くのユーザーの運転データを集め、交通事故ポイントのオープンデータと重ね合わせれば、事故が起こりやすい場所や運転ミスが発生しやすい条件を分析できる可能性があります。
「ここは事故多発ポイントです」「この交差点は人の飛び出しが多いです」といった情報をナビやアプリで通知できれば、ドライバーの危険予測を支援できます。
都会の道、田舎の道、高速道路など、運転環境によって難易度は異なります。そのため、単純な点数だけでなく、同じエリアや似た環境の中で比較できる仕組みが重要だと考えました。
15. 最終メッセージ
最後のスライドでは、SDLと優良ドライバーチェッカーによって「真の優良ドライバー」を増やしたいというメッセージを伝えました。
ペーパードライバーであっても、改めて教習所に通わずに自分の運転スキルを見直す機会を持てる。日々の運転の中で、自分の癖や弱点に気づき、少しずつ改善していける。そんな世界が実現できれば、交通事故の削減にもつながるはずです。

司会パンダ 16. Web掲載
グランプリ受賞後、複数のWebメディアでも紹介いただきました。自分のアイデアがイベント会場だけでなく、外部メディアを通じて多くの人に届いたことは、とても貴重な経験でした。

掲載メディア
- プログラミング+(ASCII:11月23日)
- プログラミング+(ASCII:11月28日)
- ロボスタ
- Car Watch
当時は「ながら運転」の罰則強化も話題になっていた時期でした。スマホ脇見などを減らすためには、スマホの代替となる音声チャット、カメラ、AI、AR、MR表示などの技術が今後さらに重要になると感じました。
17. この経験から学んだこと
このコンテストを通じて学んだのは、企画は「できること」だけでなく、「なぜ必要なのか」を伝えることで強くなるということです。
実装面では未熟な部分が多く、エラーにも悩みました。それでも、社会課題への視点、運転スキルを可視化する発想、JINS MEMEを使った独自性、SDLによる車載情報連携の未来像を組み合わせることで、作品として伝わる形にできました。
学びになったポイント
- ハッカソンで得た偶然の情報や出会いが、企画の種になること
- 実装が完璧でなくても、課題設定と未来構想が伝われば価値になること
- IoTデバイスと車載情報を組み合わせると、体験設計の幅が広がること
- 運転支援アプリには、安全性だけでなく継続利用したくなる仕組みが必要なこと
- データを蓄積し、振り返りにつなげることで、学習型のサービスに発展できること
今回の経験は、後のプロダクト企画やUI/UX設計にもつながっています。単に画面を作るだけではなく、課題を見つけ、体験に落とし込み、未来の利用シーンまで描くことの大切さを強く感じました。
18. まとめ
「優良ドライバーチェッカー」は、私にとって、アイデア、IoT、車載情報、社会課題、ゲーミフィケーション、データ分析が一つにつながった作品でした。
東京と大阪のハッカソンを経て、JINS MEMEに出会い、実装で苦労しながらも、最終的にSDLアプリコンテスト2019でグランプリを受賞できたことは、大きな挑戦の記録です。
これからも、技術をただ使うだけでなく、人の行動を少し良くする仕組み、社会課題に向き合う体験設計、使い続けたくなるプロダクトづくりを大切にしていきたいと思います。
司会パンダ
