前談

第2回RESASアプリコンテストは、私にとって「嬉しさ」と「悔しさ」が同時に残る挑戦でした。
応募総数300件を超える中から、ファイナリストBEST10に選ばれたことは大きな成果でした。全国規模のコンテストで、自分たちの企画が評価され、最終選考の舞台に立てたことは素直に嬉しかったです。
一方で、本番までの準備は想定外の連続でした。チーム開発の進行が崩れ、実装が間に合わず、仕事終わりの深夜にJavaScriptを再勉強しながら画面を直し、プレゼン動画とナレーション原稿も整える。大会当日の朝まで、ほぼ徹夜で準備を続ける状況になりました。
この記事では、華やかな「最終選考出場」の裏側にあった、実装・チーム開発・プレゼン準備のリアルな反省と学びを整理します。
司会パンダ 01. 第2回RESASアプリコンテストとは
第2回RESASアプリコンテストは、地方創生や地域課題の解決に向けて、オープンデータを活用したアプリやサービスを提案するコンテストです。
RESASは、人口、産業、観光、地域経済などのデータを可視化できる地域経済分析システムです。感覚だけで地域課題を語るのではなく、データをもとに仮説を立て、地域に合った解決策を考えるための材料になります。
私たちのチームは、京都大会での地方ハッカソンをきっかけにした企画をベースに、本大会へ応募しました。京都で検討した地域課題やアプリ構想を、全国規模のコンテストに向けて再整理し、プレゼン資料や動画としてブラッシュアップしていきました。


この大会で求められたこと
このコンテストでは、単なるアイデアだけでなく、アプリとしての実装や、ユーザーに伝わる発表も重要でした。
- 地域課題を、データや背景から捉えること
- 課題に対するアプリやサービスの解決策を考えること
- 実際に動くアプリとして形にすること
- 限られた時間で、審査員や観客に伝わるプレゼンを行うこと
つまり、企画力、デザイン力、実装力、プレゼン力のすべてが問われる大会でした。
司会パンダ 02. 1次審査を通過し、ファイナリストBEST10へ
1次審査では、京都大会で作成した資料をもとに、本大会向けに内容をブラッシュアップしました。企画意図、地域課題、サービス構想、利用シーンが伝わるように構成を見直し、自身のプレゼン動画も再撮影して提出しました。
この時点では、アプリの実装データは十分に整っていませんでした。提出内容は、完成アプリというよりも、企画の方向性や利用イメージを伝える動画が中心でした。
それでも、応募総数300件超の中からファイナリストBEST10に選出されました。地方創生に関する自分たちの企画が、全国規模のコンテストで評価されたことは大きな励みになりました。
嬉しさと同時に、不安もあった
ファイナリストに選ばれたことは、本当に嬉しい出来事でした。しかし同時に、実装面の準備が十分ではないことへの不安もありました。
最終選考では、企画の魅力だけでなく、実際に動くアプリとしての完成度も問われます。つまり、ここから本番までに、どこまでアプリを形にできるかが大きな勝負になりました。
司会パンダ 03. 最終選考までの裏舞台

1次審査の段階では、アプリ作品の実装データが十分に準備できていませんでした。応募時には、アプリの完成イメージを伝える動画を中心に提出していました。
年末年始に実装を進める予定だったため、応募時点では「本大会までに仕上げればよい」と考えていました。しかし、納期が近づいたタイミングでチームメンバーに進捗を確認すると、実装が未着手のままであることがわかりました。
当時の私は本業も多忙で、毎日終電帰りに近い日々でした。その状況でチーム内のエンジニアやプロジェクトオーナーに確認を進めると、次第に連絡が取りづらくなり、最終的には音信不通に近い状態になってしまいました。
チーム戦のリスクを痛感した瞬間

チーム開発には、得意分野を分担できる強みがあります。一方で、責任範囲やコミットメントが曖昧なまま進むと、最終局面で大きなリスクになります。
今回は、実装担当の進捗が見えないまま時間が過ぎ、決勝進出が決まった時点で、実装が間に合っていないことが明確になりました。
ファイナリストに選ばれた嬉しさと同時に、「この状態で本当に出場できるのか」という強い焦りがありました。
辞退も考えたが、最後まで挑戦することに
チームとしての実装体制が崩れた一方で、コンテスト側では決勝大会への進出が決まっていました。
この時点で、私は「辞退するべきか」「最低限でも形にして出場するべきか」という判断に迫られました。運営事務局にも最悪のシナリオを相談しましたが、「辞退は避けてください」との返答をいただきました。
そこで、私は「審査対象外になるかもしれませんが、当日ギリギリまで実装を進めます」と決め、最後まで出場に向けて準備することにしました。
完璧ではなくても、舞台に立つ意味
今振り返ると、この判断には賛否があると思います。
完成度が低い状態で出場することは、チームとしても個人としても苦しいことでした。
しかし、辞退してしまえば、そこで学びは止まってしまいます。たとえ不完全でも、最後まで作り、発表し、他の参加者の完成度を見て、自分の足りない部分を知ることには大きな意味がありました。
04. 徹夜続きの実装とプレゼン動画制作
決勝大会までの約2週間は、徹夜に近い準備の日々が続きました。深夜0時ごろに帰宅した後、そこからアプリの実装や画面ブラッシュアップ、プレゼン動画制作に取り組むような状態でした。
チームのエンジニア1名が最低限のバグ修正を手伝ってくれましたが、企画仕様として目指していた状態には遠く、アプリとしてはかなり限定的な完成度でした。
本大会では、実装アプリの提出が求められていました。Facebookで手伝ってくれるエンジニアを募集したものの、すぐに協力者が見つかる状況ではありませんでした。
JavaScriptを再勉強しながら、画面をブラッシュアップ
その後、私はJavaScriptを再勉強しながら、フロント画面のブラッシュアップを進めました。
デザイン、実装、ナレーション原稿、プレゼン動画制作、運営との確認、キャラクターの著作権確認など、同時に進めるタスクが非常に多くありました。本業の仕事も忙しく、深夜作業が続いたため、ほぼ徹夜のような毎日でした。
何度も「もう駄目だ、間に合わない」と感じながらも、最低限のアプリ画面を整え、なんとか本番当日の舞台に立つことができました。
今なら、スコープをもっと小さくしたと思う
この経験で強く感じたのは、追い込まれた時ほどスコープ判断が重要だということです。
当時は、アプリの完成度を少しでも上げようとしていました。
しかし、本番で求められるのは、すべての機能を完成させることではなく、審査員に価値が伝わる状態にすることです。
今なら、開発は最小限の機能に絞り、プレゼン動画や発表練習にもっと時間を使う判断をしたと思います。
司会パンダ 05. 初めての動画アテレコ型プレゼン

大会本番の朝、プレゼン動画の読み合わせを行った際に、動画と原稿の噛み合わせに不備があることがわかりました。
直前まで原稿を書き換え、当初目指していた構成から変更し、動画に合わせて読み上げる作戦に切り替えました。しかし、プレゼンの出来としては、過去の自分の発表の中でもかなり厳しい仕上がりになりました。
寝不足と準備不足の影響もあり、動画のタイミングとセリフが噛み合わず、焦りながら進行する形になってしまいました。
動画に声を合わせる発表形式への準備不足
この大会では、KeynoteやPowerPointを使ってその場でスライドを操作するのではなく、事前提出したプレゼン動画に合わせて、会場で声を当てる形式でした。
この発表形式は初めての体験でした。だからこそ、本来であれば、実装作業と同じくらい、動画に合わせて話す練習に時間を割くべきでした。
しかし実際には、実装と動画制作に追われ、発表練習の時間をほとんど確保できませんでした。その結果、セリフを早く読んでしまったり、動画画面とのタイミングがずれたりと、発表としての完成度を下げてしまいました。
伝える準備も、プロダクトの一部だった
アプリを作ることに集中しすぎて、「どう伝えるか」の準備が不足していました。
しかし、コンテストでは、プロダクトの価値を短時間で伝える力も重要です。どれだけ良い企画でも、審査員に伝わらなければ評価されません。
今回の失敗は、プレゼン設計の大切さを痛感する経験になりました。
司会パンダ 06. 他ファイナリストから受けた刺激

全チームのプレゼンを見て、ファイナリストの皆様の作品は、プレゼン動画もアプリのクオリティも非常に高いと感じました。
企画の切り口、データの使い方、実装、発表の見せ方まで、どのチームも完成度が高く、本当に素晴らしい内容でした。
自分自身は、最終選考の舞台に立ちたいという強い想いで参加しました。しかし、実装やチームフォローに追われた結果、肝心のプレゼン練習に時間を割けず、動画アテレコも噛み合いませんでした。
同じ控室だった優勝者への尊敬

同じ控室だった優勝者の方は銀行員で、エンジニアではありませんでした。それにもかかわらず、企画から実装まで1人で進め、このコンテストのためにプログラムを勉強したと聞きました。
プレゼン、動画、実装、優勝後のコメントまで、すべての完成度が高く、プロレベルのセンスに驚きました。自分が苦しみながら準備していたからこそ、その完成度の高さがより強く印象に残りました。
悔しさよりも、未熟さを知れた価値
参加者の作品を見て、「上には上がいる」と痛感しました。
悔しさはありましたが、自分の未熟さを知ることができたのは、大きな収穫だったと思います。自分ができなかったこと、足りなかったこと、次に伸ばすべきことが、はっきり見えた大会でした。
司会パンダ 07. RESAS参加と地方創生への関心の背景

今回の作品は、チームメンバーと創出した企画です。チームの企画コンセプトを守りつつ、私自身の関西への愛情や、これまで考えてきた地域課題への関心も組み込んだ内容でした。
私がRESASや地方創生に関心を持つようになった背景には、いくつかの個人的な経験があります。震災、都市計画、地域の復興、地方の観光、オープンデータ、学生たちの発表など、複数の経験が重なって、地方創生への関心が強くなっていきました。
- 阪神大震災の影響を受け、大学で震災復興のデータ収集や都市計画を学んだこと。
- 東日本大震災の際に、自分の無力さに気づいたこと。
- 熊本地震を機に、改めて日本の未来や地方創生へ関心を持つようになったこと。
- 石川、高知、福岡、沖縄などを基軸に、地方創生や移住、地域活動への関心を深めたこと。
- RESAS2015で、福島県の高校生による観光アプリ企画に感銘を受け、RESASに関心を持ったこと。
- RESAS2017で、愛媛の高校生による他県との交流プランに感銘を受けたこと。
- アイデアコンテストへの応募を検討する中で、実装の難しさを感じ、アプリコンテストやハッカソンに参加するようになったこと。
データから地域を見ることの面白さ

地方創生という言葉は大きく聞こえますが、私にとっては、自分の経験や旅先で見た地域の課題、震災から学んだこと、学生や地域の方々の取り組みから受けた刺激がつながったテーマです。
RESASは、地域の現状をデータから見つめ直すきっかけになります。感覚だけで課題を語るのではなく、データを見ながら仮説を立て、地域に合ったサービスや体験を考える。その姿勢を学べたことも、大きな価値でした。
司会パンダ 08. もし次にRESASへ挑戦するなら

もし次回RESAS関連の大会に挑戦するなら、今回とは違う進め方をしたいと考えています。
自分の関心が高い領域である、伝統工芸、教育、婚活、経営などのジャンルでも、オープンデータを引用した企画は十分に考えられます。地域課題は観光や人口動態だけでなく、文化、産業、学び、働き方、人のつながりなど、幅広いテーマと関係しています。
今回の優勝者のように、1人で好きなテーマを選び、企画・デザイン・実装まで自走する方法もあります。一方で、共創で挑戦する場合は、想いの近い友人と組み、役割や責任範囲を明確にしたうえで進めることが重要だと感じました。
チーム戦では、想いと責任範囲の共有が重要
今回の経験で、チーム戦には大きな可能性がある一方で、責任範囲やコミットメントが曖昧なまま進むと、最終局面で大きなリスクになることを学びました。
共創するなら、企画への想い、担当範囲、実装スケジュール、最悪の場合の代替案まで、早い段階で共有しておく必要があります。特に、実装が必須のコンテストでは、エンジニア不在になった場合のリスクを事前に見積もることが重要です。
自分で実装できる経験が、企画の視野を広げる
今回、私はエンジニアにはほど遠い状態でしたが、それでもJavaScriptを再勉強し、最低限の実装に向き合いました。この経験によって、サービス開発を企画だけでなく、実装側からも少し俯瞰して見られるようになったと感じています。
RESASを活用したアイデアは、まだまだ出せると思います。次に挑戦するなら、企画、デザイン、実装、プレゼンのバランスを取りながら、自分が本当に関心を持てるテーマで、より伝わる形に仕上げたいです。
司会パンダ 09. 参加して学んだこと
第2回RESASアプリコンテストの最終選考は、嬉しさと悔しさの両方が残る経験でした。
ファイナリストBEST10に選ばれたことは大きな成果でした。一方で、チーム開発の進行、実装準備、動画プレゼン、発表練習、スコープ判断など、多くの面で課題が残りました。
特に学びになったポイント
- 実装が必要なコンテストでは、早い段階で最小構成を決めることが重要
- チーム開発では、担当範囲と責任範囲を曖昧にしないことが重要
- 作ることだけでなく、伝えることもプロダクトづくりの一部
- 動画プレゼンでは、原稿と映像のタイミング設計が重要
- 本業と並行する場合は、やることよりも「やらないこと」を決める必要がある
- 自分で実装に触れることで、企画やデザインの視野が広がる
特に、プレゼン動画に合わせてアテレコする形式への準備不足は大きな反省点です。実装を頑張ることも大切ですが、最終的に審査員や観客に伝わるのは、限られた時間の中で何をどう見せるかです。
その意味で、発表設計の重要性を改めて学びました。
10. まとめ
第2回RESASアプリコンテストの最終選考は、私にとって大きな挑戦でした。
ファイナリストBEST10に選ばれたことは、素直に嬉しい成果です。一方で、実装準備の遅れ、チーム開発の難しさ、動画プレゼンへの対応不足など、多くの課題も残りました。
ただ、この経験があったからこそ、企画だけでなく実装に踏み込む重要性、プレゼン設計の大切さ、チームで作る際のリスク管理、そして自分自身でプロダクトを形にする力の必要性を実感できました。
地方創生への想い、データを活用した企画、実装に踏み込む勇気、チームで挑戦する難しさ。これらを一度に学べたことは、今後のプロダクト企画やUI/UX設計にもつながる大きな経験でした。
悔しさも含めて、この挑戦は自分にとって大切な実践記録です。次に挑戦するときは、より早く、より小さく、より伝わる形で作り切ることを意識したいと思います。
司会パンダ