前談
POINT2021年4月23日〜25日に開催された「Startup Weekend Tokyo 地方創生×NoCode」に、デザイナーとしてチーム「エル ビアッヘ」で参加。54時間という限られた時間のなかで、地方の中小宿の魅力を届けるサービスを設計し、MVP(1st Place)を受賞しました。本記事では、課題整理、ビジネスモデル、プロトタイプ制作、発表中のアクシデント、そしてチームワークまでを振り返ります。
2021年4月23日(金)から25日(日)にかけて開催された「Startup Weekend Tokyo 地方創生×NoCode」に参加し、受賞しました。

今回のテーマは、地方創生とNoCode。
開発リソースが不足しがちな地方の課題に対して、アイデアとNoCodeの力を活用し、短期間でサービスの仮説検証まで行うイベントです。
私は、チーム「エル ビアッヘ」のメンバーとして参加し、主にデザイン、ユースケース整理、画面遷移、プロトタイプ動画制作を担当しました。
結果として、チームでMVP(1st Place)を受賞することができました。
この記事では、イベント参加の背景、チームで取り組んだ課題、私が担当した役割、発表時のアクシデント、そして受賞までの流れを振り返ります。
司会パンダ
この記事で整理していること
- Startup Weekend Tokyo 地方創生×NoCodeの全体像
- 中小宿オーナーが抱える集客・発信の課題
- 地域密着型インフルエンサーを軸にしたサービス構想
- 成果報酬型ビジネスモデルとステークホルダー設計
- デザイナーとしてのユースケース整理とプロトタイプ動画制作
- 発表中の接続不良アクシデントと、チームのアドリブ対応
- 54時間でMVP受賞に至ったチームワークの要点
01. Startup Weekend Tokyo 地方創生×NoCodeとは
イベント概要
週末54時間で、地方課題に向き合うNoCodeハッカソン
POINTStartup Weekendは、週末の限られた時間でアイデアを事業として形にする起業体験型イベント。今回は「地方創生×NoCode」というテーマで、地方の事業者が抱える集客・発信の課題に、プログラミングに依存しないNoCodeで挑みました。
Startup Weekendは、週末の限られた時間でアイデアを事業化し、チームでビジネスモデルやプロトタイプを作り上げる起業体験型イベントです。
今回のテーマは「地方創生×NoCode」。
地方には、温泉宿、飲食店、観光地、地域体験など、まだ十分に知られていない魅力がたくさんあります。
一方で、地方の事業者は、Web集客、SNS活用、予約導線の整備、デジタルツールの導入などに課題を抱えていることも少なくありません。
そこで、プログラミングに大きく依存せずサービスを形にできるNoCodeを活用し、地方の課題解決につながるアイデアを短期間で検証することが、このイベントの大きな狙いでした。

02. ターゲット課題:宿オーナーが抱える発信の壁
課題発見
魅力がないのではなく、魅力が”届いていない”
POINT地方の中小宿の課題は、宿そのものの魅力不足ではなく、「魅力を必要としている旅行者にどう届けるか」という発信・認知の壁にありました。WebもSNSも、人手も予算も限られるなかで、見つけてもらう導線が育っていなかったのです。
宿オーナーが抱えている悩み
ターゲットとなるのは、地方で中小規模の宿泊施設を運営している宿オーナーです。
宿そのものには、料理、景観、人柄、温泉、地域体験など、たくさんの魅力があります。
しかし、宿オーナーが高齢であったり、ITツールへの苦手意識があったりすると、
WebサイトやSNSを使った発信が十分にできない場合があります。
さらに、広告宣伝に大きな予算をかけることも難しく、大手予約サイトや有名宿に埋もれてしまうこともあります。

課題を掘り下げる
チームでは、「なぜ宿泊客が来ないのか」を分解しました。
その中で見えてきたのは、宿泊施設そのものに魅力がないのではなく、マーケティング、認知、発信、ニーズ把握の部分に課題があるということです。
- 宿の魅力や強みを整理できていない
- 検索やSNSで見つけてもらう機会が少ない
- 宿泊客のニーズを十分に把握できていない
- 宣伝やブランディングの方法がわからない
- ITツールを使った集客にハードルがある
つまり、解決すべき本質は、「宿の魅力を、必要としている旅行者にどう届けるか」でした。


03. ソリューション:地域密着型インフルエンサーが宿を紹介する
サービス構想
地域を愛する人の言葉で、宿の魅力を伝える
POINT大規模な広告ではなく、地域に詳しいインフルエンサーが自分の言葉で宿の魅力を発信する仕組みを構想。広告予算が少なくても始められ、旅行者にも”信頼できる人の体験談”として届く設計を狙いました。

地域に詳しい人、地域を愛する人、地域で活動している人――そうした”地域密着型インフルエンサー”が宿を体験し、自分の言葉で魅力を伝える。
旅行者は、フォローしている人の本音の投稿を通じて宿を知り、自然に予約へとつながっていく。そんなフローを軸に据えました。
広告のように一度きりの露出ではなく、人の信頼に乗って情報が広がる構造は、中小宿のように予算が限られる事業者にも合っています。
04. ビジネスモデル:成果報酬型で宿オーナーの負担を下げる
ビジネスモデル
“宿泊が発生した分だけ手数料”という納得感のある構造
POINTビジネスモデルは成果報酬型。インフルエンサーの投稿経由で実際に宿泊が発生した場合のみ手数料を受け取る形にし、初期費用の負担を最小化することで宿オーナーが安心して導入できる構造にしました。
ビジネスモデルは、成果報酬型を想定しました。
インフルエンサーが無料または特別条件で宿泊し、InstagramなどのSNSで宿の魅力を発信します。
その投稿を見たフォロワーが宿泊につながった場合、宿泊代の一部を手数料として受け取るモデルです。
このモデルにした理由は、中小規模の宿泊施設にとって、初期費用の大きい広告施策は導入ハードルが高いからです。
実際に宿泊につながった場合に費用が発生する形であれば、宿オーナーにとっても試しやすく、インフルエンサーや運営側にも成果が返ってくる仕組みになります。
関係するステークホルダー
- 宿オーナー:魅力はあるが、Web集客やSNS発信に課題がある
- 地域密着型インフルエンサー:地域や宿の魅力を自分の言葉で発信する
- フォロワー・旅行者:信頼する人の投稿をきっかけに宿を知る
- 運営側:宿とインフルエンサーをつなぎ、成果報酬で収益化する
複数の立場が関わるため、単純な宿泊予約サービスではなく、「誰が、どのタイミングで、何を登録し、どの情報を見るのか」を整理する必要がありました。

05. 今後の展望:コロナ禍以降の旅行需要にも対応する
展望
“地域そのもの”の魅力を伝えるハブを目指す
POINT近場・分散型・地域再発見型の旅行ニーズが高まるなかで、本サービスは「宿予約」から一歩進んで「地域の魅力を伝えるハブ」として機能できる伸びしろがあります。将来的には多言語化によるインバウンド対応も射程に入れました。
サービスの展望としては、コロナ禍以降の旅行需要の変化も意識しました。
近場の旅行、密を避けた旅行、地域の魅力を再発見する旅行など、旅行者の行動は大きく変化しています。
その中で、まだ知られていない優良な中小宿を見つけてもらうことは、地域にとっても旅行者にとっても価値があります。
また、将来的には外国人旅行者への対応も想定しました。
地域密着型インフルエンサーや語学堪能なメンバーを活用し、英語、スペイン語、中国語など、多言語で地域の魅力を伝えられれば、インバウンド需要にもつなげられる可能性があります。
単に宿を予約してもらうだけでなく、地域そのものの魅力を伝えるハブとして機能できることが、
このサービスの伸びしろだと感じました。

06. 私の担当:ユースケース整理とプロトタイプ制作
デザイナーの役割
画面を作るより前に、”利用者の流れ”を揃える
POINT複数のステークホルダーが登場するサービスでは、画面を作る前にユースケースを整理することが品質を左右します。誰が・いつ・何を見るのかを揃えることで、短時間でも一貫したサービス体験を設計できます。
私は、チーム内で主にデザインとプロトタイプ制作を担当しました。
Startup Weekendでは、初日にアイデアを固め、2日目には発表できる状態までサービスをまとめる必要があります。
つまり、ビジネスモデルを考えるだけでなく、画面や利用シーンまで短時間で形にしなければなりません。
今回のサービスは、宿オーナー、インフルエンサー、フォロワー、運営側という複数の利用者が登場します。
そのため、いきなり画面を作るのではなく、利用者ごとの流れを揃えることから始める必要がありました。
そこで、最初に「誰が、何をするのか」を簡易的に整理しました。
宿側、インフルエンサー側、運営側の流れを分けて考えることで、必要な画面や情報の優先順位が見えやすくなりました。

NoCodeで作る難しさ
NoCodeツールとしては、Adalo、Glide、Bubbleなどを候補に挙げて検討しました。
ただし、今回のサービスはステークホルダーが多く、画面構造も複雑になりがちです。短時間で全機能をNoCodeで実装するのは難しかったため、プロトタイプ動画として体験を伝える方針に切り替えました。
07. 発表:伝説的なプレゼン
アクシデント
発表者が画面から消えた瞬間、チームは止まらなかった
POINT5分間のプレゼン中、発表担当のリーダーが接続不良で画面から消えるというアクシデントが発生。直後、発表担当ではなかったメンバーが即座に引き継ぎ、残り時間をアドリブで完遂しました。チームの底力を象徴する場面でした。
発表は、5分間のプレゼンと2分間の質疑応答でした。
発表5分の内訳は、前段の説明が約1分半、私が制作したプロトタイプ動画が約1分30秒、まとめが約2分という構成でした。
ところが、発表中に予想外のアクシデントが起きました。
メインで発表していたチームリーダーが、私の動画が終わったタイミングで接続不良により画面から消えてしまったのです。
一瞬、会場が無言になりました。私自身も「これは発表のやり直しをお願いするしかないかもしれない」と思いました。
しかし、その瞬間、当初は発表担当ではなかったメンバーがすぐに割り込み、「接続不良で発表者が居なくなったので、私が引き継ぎます!」
と宣言し、残りの時間をアドリブで説明してくれました。
タイムロスした分、原稿量も減らしながら、要点を押さえて時間通りにまとめる対応力は本当に見事でした。
オンラインイベントとはいえ、発表のやり直しが認められる可能性は低かったと思います。
だからこそ、その場で引き継いだメンバーの行動力、人間力、スキルには大きな尊敬を感じました。
08. MVP受賞につながったチームワーク
チームの力
最年少リーダー × プロダクトオーナー × デザイナーの好相性
POINTMVPの背景にあったのは、「リーダーが抱え込まず、得意領域ごとに任せる」というチーム運営。最年少リーダーの熱量、プロダクトオーナー視点の分析、デザイナーの可視化が噛み合い、54時間で1つのサービスとして成立しました。
MVP受賞という結果は、メンバーそれぞれのバリューがうまく機能したからこそ得られたものだと感じています。
特徴的だったのは、チームリーダーが最年少でありながら、とても情熱が高く、事前にアンケートや企画書のたたき台を準備していたことです。
また、リーダーがすべてを抱え込むのではなく、自分がやりたいタスク以外をメンバーに任せたことも、チームがうまく回った理由のひとつでした。
さらに、別のメンバーがプロダクトオーナーのような役割を担い、定性分析や定量分析の観点からビジネスプランを整理してくれました。
そのおかげで、残りのメンバーもブレストや作業フォローに集中しやすくなりました。
私自身も、ファシリテーションや画面設計、プロトタイプ制作を通じて、チームの考えを形にする部分で貢献できたと思います。
チームで成果を出すために大切だと感じたこと
- リーダーがすべてを抱え込まず、メンバーに任せること
- ビジネスモデルと画面体験を早めに接続すること
- 短時間でも、利用者ごとの流れを可視化すること
- トラブルが起きても、誰かがすぐにフォローできる状態を作ること
- 得意領域の違うメンバーが、それぞれの役割でバリューを出すこと
09. この経験から学んだこと
学び
短期間のプロジェクトほど、課題整理と役割分担が効く
POINT54時間という制約のなかで成果を出すには、「誰のための、どんな体験か」を早い段階で揃えることが要でした。NoCodeでもデザイン視点でも、設計の手抜きは時間を奪います。
今回のハッカソンで学んだことは、短期間のプロジェクトほど、課題整理と役割分担が重要だということです。
アイデアが良くても、チーム全員が同じ方向を向けなければ、サービスとして形にすることはできません。
特に今回のように、宿オーナー、インフルエンサー、旅行者、運営側という複数の利用者が関わるサービスでは、誰の課題を解決するのか、どの体験を優先するのかを早い段階で揃える必要があります。
デザイナーとしての学び
- 地方課題は、現場の実体験から生まれると強い
- NoCodeでも、事前のサービス設計や画面整理は欠かせない
- 複数ステークホルダーのサービスでは、ユースケース整理が重要
- プロトタイプ動画は、短時間でサービス体験を伝える手段として有効
- ハッカソンでは、個人スキルだけでなくチームの連携力が成果を左右する
デザイナーとしては、見た目の画面を作るだけでなく、チームの考えを整理し、サービスの価値を伝わる形に変換することが重要だと改めて感じました。
司会パンダ 10. まとめ
POINT「Startup Weekend Tokyo 地方創生×NoCode」での3日間は、“企画者ではなくデザイナーとしてチームを支える”という新しい体験でした。受賞そのものより、課題整理〜可視化〜アドリブ対応まで含めて1つのサービスを発表まで運べたことが、最大の収穫でした。
「Startup Weekend Tokyo 地方創生×NoCode」は、地方の課題、宿泊施設の集客、インフルエンサー活用、NoCode、チーム開発など、さまざまな要素が重なった濃いイベントでした。
私にとっては、企画者として前に立つのではなく、デザイナーとしてチームを支え、サービス体験を可視化する役割に徹したことが大きな学びでした。
結果としてMVPを受賞できたことはもちろん嬉しいですが、それ以上に、メンバーそれぞれが自分の強みを活かし、予期せぬトラブルも乗り越えながら、ひとつのサービスとして発表まで持っていけたことが印象に残っています。
今後も、アイデアを考えるだけでなく、課題を整理し、体験に落とし込み、プロトタイプとして形にする力を大切にしていきたいと思います。
司会パンダ